ソロキャンプ 浄土平野営場 20140614

 

2014年06月15日 18:49

2014年6月14日 福島県福島市浄土平野営場


土日は、もうどこのキャンプ場に行っても、人だらけだ。
この1週間、この週末を目指して、なるべく人が居なさそうで、そして星が綺麗なキャンプ場を探していた。
吾妻連峰の吾妻小富士の近くに、浄土平野営場という場所があり、とても良さそうだったので、ここへ行く事にした。

この時持っていった物
服装


種別

内容



服装
半袖シャツ、Tシャツ、ジーンズ、スニーカ


服装(持参)
モンベルクリマエアジャケット


ザック内(グレゴリー バルトロ65)


種別

内容



テント
アライテント エアライズ1、グラウンドシート


マット
モンベル U.L.コンフォートシステム パッド150


シュラフ
モンベル スパイラルダウンハガー #3、エアピロー、イスカ ゴアテックスシュラフカバーウルトラライト ワイド


クッカー類
スノーピーク トレック900、イワタニプリムス P-153、250OD缶、シエラカップ、スポーク


食料
ザックには入れず


雨具
ザ・ノースフェイス レインテックス FLIGHT M


イス
エーライト メイフライチェア



ダウンジャケット、ダウンパンツ


その他
ラジオ、ナイフ、ヘッドライト、LEDランタン、双眼鏡 ビクセン アルティマZ 7x50


ザック外の道具(使用したもののみ記載)


種別

内容



焚き火
スノーピーク 焚き火台S、耐火グローブ、火バサミ、炭


調味料
コールマン スパイスボックス


タープ
アライテント ビバークタープM、アライテント コンパクトポール150


これまで、星が良く見えそうな時、天体望遠鏡をキャンプ場へ持って行き、天体観測をしていたが、天体望遠鏡は結構大きく、設置がやや面倒な事もあって、最近は出番が少なくなっていた。
手軽に天体観測を楽しむ為、双眼鏡を購入する事にした。ネットで評判を調べると、ビクセンのアルティマZ 7x50が入門機としても、性能としても評判が良いと言う事だった。
重量も750g程度と、近似タイプに比べると軽く、持ち運びにも良さそうで、ザックにも入れられそうだった。早速、これを購入した。
双眼鏡での天体観測というのは、結構ポピュラーで、星1個ずつを観察するというよりかは、星雲などのやや広い範囲を見るのに向いているのだという。楽しみだ。


東北も梅雨に入り、週末が雨になると出掛けられず、悶々する事が続いていた。
当初の予定では、福島の浄土平野営場ではなく、秋田の須川湖キャンプ場に1泊し、翌日、同県のとことん山にもう1泊する計画としていたが、週末の秋田は雨の為、作戦変更せざるを得なかった。
双眼鏡も買ったことだし、星の良く見える場所でテントを張りたかった。そして、人の居ないであろう場所が良かった。
マイナーなキャンプ場で、星が綺麗、という条件で調べていた所、福島の浄土平野営場を見つけた。
ここは、日本百名山の吾妻連峰の標高1600m地点という、非常に高度の高い場所にあって、吾妻小富士という山を望めるキャンプサイトがあるという事だった。
吾妻連峰の吾妻小富士と言えば、雪兎の事くらいしか知らなかった。雪兎というのは、5月くらいになると、山肌の雪が兎に見えるようになり、この兎が出現すると、田植えのシーズンなのだという知識しか持って居なかった。
よくよく調べてみると、吾妻連峰へ続く吾妻スカイラインは有料だったのが無料開放されるようになり、気軽に向かえる場所になったようだった。そして、今回の目的地の近くには、浄土平天文台というのがあり、紹介サイトで「天の川など当たり前」と書かれている位で、星空の美しさは補償付きと言っても良かった。
目の前に吾妻小富士の見えるキャンプサイト、満点の星空、もうここに行きたくて仕方がなくなっていた。

この浄土平野営場は、仙台市からだと、2時間弱という所だ。
東北自動車道に乗り、福島西インターで降り、その後は吾妻スカイラインを進んで行く。
ぐねぐねという山道をひたすら走ると、急に風景が変わって来る。木の少ない、ハゲ山の風景になってくるのだ。
森林限界だ。標高が高くなると、高木が生きる事が出来なくなり、森林を形成出来なくなる。森林限界は東北だと標高1600m程度からという事で、この吾妻連峰は標高1600mはゆうに超えた高さにあるのだ。
この吾妻連峰は、活火山で、しかも噴煙が立ち上っている。道路には、火山ガスの為にここに駐車しないように、という旨の注意を促す為の看板も多く立っている。ここは、まさに生きた山だ。


今回の目的地のキャンプ場は浄土平野営場だが、浄土平キャンプ場だとか、地図や看板を見ると兎平野営場だとか書いてある。兎平というのは、前述の雪兎の事だろう。それにしても、名前が統一されていない感が、何ともマイナーさを感じさせる。
付近へ行ったものの、キャンプ場の場所が良く解らなかったので、浄土平ビジターセンターに寄り、場所を教えて貰う。ビジターセンターから更に進んだ先に、兎平駐車場というのがあり、その真向かいの道から進んだ先がキャンプ場だという事で、パンフレットを貰った。このパンフレットには、浄土平野営場と書いてある。ウーム。

兎平駐車場に到着した。
平地では晴れの予報だが、この山は雨が降っている。しかも風もかなり強い。
キャンプ場へは、車でも進めそうだが、先が良く解らないので、まずは徒歩で向かうしかない。
車内でレインウェアを着、ザックにはザックカバーを被せ、浄土平野営場へ向かう。
ここは、思った以上に季節が進んでいない。道の脇に雪があるのだ。雪の脇には可愛いフキノトウも居る。


3分程度進むと、車が見えてきた。何だ、駐車場があるのではないか。歩いて、しかもびしょ濡れになって損をした。
受付は、吾妻小舎という小屋で行うという事で、小屋の戸を開き、こんにちは、と声を掛ける。電気が付いておらず、人が居ないと思ったら、はい、と声がした。
声の主のおとうさんに、ここでキャンプしたい旨を伝え、受付簿に所定の情報を記入し、テント1張分の500円と、基本料金の400円で、計900円を支払った。空いているから、場所は何処でも自由に選んでいいよ、という事だったので、吾妻小富士の望めるサイトにしたい事を伝えると、AサイトのA1という場所を勧められた。
そのような話を、そのおとうさんとしていたら、調理中だったようで、加熱中のおかずを焦がしてしまったようだった。ごめんなさい。

テントサイトに向かうと、素晴らしい風景が待っていた。
目の前が吾妻小富士だ。雨でもあまり霞んで見えないのは、本当に近いからだ。
星を目当てに来たのに、雨というのは、出鼻を挫かれた感があるが、この眺めで、ふと気持ちが切り替わった。


さて、雨の中でテント設営をしなければならない。
ウッドデッキにテントを張るべきなのだが、雨が気になる事や、この強風の中でペグでなく石でテントを固定しようものなら、テントが飛ぶ様がありありと想像出来たので、ウッドデッキの脇に設営した。


雨を凌がねばならないので、久しぶりにタープも張る事にした。
久しぶりだが、結構短時間で張ることが出来た。


テントとタープの位置関係はこんな具合となった。


タープの中で雨が止むのを待っていると、一気に晴れてきた。
山の天気は変わりやすいというが、本当に変わりやすい。強風は相変わらずだが、さっきまでの雨が上がり、青空になった。
本当に、どうなっているんだ。



少し、辺りを散策しよう。
さっきの吾妻小舎の先に道があって、その先に桶沼という火山湖があるという。行ってみよう。
吾妻小舎の前に差し掛かると、さっきのおとうさんが居て、少し話をした。テントサイトの景色が素晴らしかった事、この場所の自然が美しい事。
おとうさんは、熊に気をつけてね、と言った。私がテントを張ったAサイトの奥のBサイトで熊の足跡を最近見たというのだ。冬では、この吾妻小舎の前にも出没し、大きな糞をしていくのだという。
私はどうも、熊の神様に愛されているのか、結構行く先々で熊の影を感じさせられる。

さて、桶沼を目指して、吾妻小舎の先の細い細い道を進んでいく。
雨の後だから、結構ぬかるんでいる。人の足跡はあるが、熊の足跡はないようだ。
10分位上ると、開けた場所に出た。桶沼だ。
ああ、美しい。
ソロキャンプをするようになって、色々出かけるようになったが、山の自然の持つダイナミックさというのは、他とは一味も二味も違う魅力を持っていて、どうだと言わんばかりにグイグイ来るパワーがある。


テントサイトに戻って、夜の準備をしていると、吾妻小舎のおとうさんが来て、タープはテントと見なす事になっているから駄目だよ、という事を言われた。
そして、テントサイトでは、ガスストーブはいいが、薪や炭を使った調理は駄目で、そういうのは、炊事場でやって欲しい、という事だった。
理由は、言わなくても解る。この自然を継続していく為だ。タープは、まあ、ルールはルールだ。仕方ない、片付けよう。

先程も経験した様に、山の天気は変わりやすい。それに、タープ無しで荷物を野ざらしにするのは勇気が要る。
荷物類は、テントに入れられるものはテントに入れ、コンテナなどは、炊事場に避難させ、炊事場で夜を待つ事にした。
炊事場は、Aサイト、Bサイト、Cサイトそれぞれに設けてあって、水場も竈もあって、自由に使っていい事になっている。意外と、結構施設は整っているのだ。


焚き火の火が点かない。
1時間もチャレンジしている。
通常であれば、落ちている細い枝などを集めて、焚き付けに使ったりするのだが、さっきの雨で、全部濡れてしまって、火が点いても弱々しく、薪までどうにも火が点かないのだ。
ガムテープ着火法や、新聞紙も試してみたが、駄目だった。
今日は、火の神様に見放されているとしか思えない。
ガムテープも尽きかけ、最後のチャレンジを行った。湿っている小枝は一切諦め、ガムテープの着火剤にだけに賭ける事にした。薪も、乾いている物と、火の付きやすそうなものだけを厳選し、キャンプファイヤー方式で、縦横を交互に組み上げて見た。
火をつける。
半ば湿った草や小枝に火が邪魔されず、上へ上へと火が伝っていく。小さな火が徐々に薪に燃え移り、やがて大きな火になり、完全に薪に火が移った。
成功した!
この感動は、私にしか解らない。1時間も失敗を繰り返したのだ。ようやく大きな火になった焚き火を見た私の気持ちは、原始人がようよう火を熾し、これから夜を迎える準備が出来た喜びと近しいものがあると思う。
新聞紙も無くなり、本当に最後のガムテープだった。これで駄目だったら、今日は焚き火無しで、ガスストーブで調理する事を覚悟していた。
本当に安心した。


それにしても、この電灯の点く中の焚き火と言うのは、どうにも様にならない。興が削がれるというか、何とも味気ないキャンプだ。
所謂完ソロで、いつもの通り一人ぼっちだが、今日は火の神様にも嫌われ、いつもより強く疎外感を感じる。
ネットのどこかで、ソロキャンプに行く理由は、家族の大切さを再確認しに行く為だ、というのを読んだ事がある。
私も、今日、家族を想った。
ソロキャンプをした事がある人なら、解る感情だと思う。


さて、待ちに待った夜だ。
星だ。星を見るのだ。星を撮影する為に、マニュアル撮影での長時間露光の方法も勉強して来た。
どれどれ、天の川が当たり前の星空は・・・そこには無かった。
やはり、少しもやがかかっており、星が余り見えなかった。
北斗七星付近を撮影してみるも、イマイチだった。私のやり方が悪いのだろうか。感度をもっと上げた方が良かった様だ。
撮影が駄目なら、双眼鏡だ。
双眼鏡を目に当て、星にピントを合わせる。
おお、と声が出た。肉眼では見えない小さな星の光が見える。あの暗い空間に星があったのかと思う。
双眼鏡での天体観測の場合、手振れが気になるという事が書いてあったが、このアルティマZ 7x50程度の倍率であれば、それもあまり気にならなかった。


それにしても、冷えてきた。
ここは標高1600mだ。
こんな、とことん山でくつろいでいた時のような、自然をナメた格好で過ごせる筈がない。ザックの奥から、ダウンジャケットとダウンパンツを引きずり出し、フリースの下と、パンツの下に履いた。体温で温まるまでは少し寒いが、じきに暖かくなる。やはり臨機応変に対応出来る装備を持っておくというのは、大事な事だ。
少し経つと、月が出てきた。
もしかして、満月か。凄い光で輝いている。
この光では、星はもう観測できない。
それでもしばらく星を眺めていたが、何とも贅沢な時間だ。
テントに入り、酔いに任せて寝る。
ふと目が覚めると、雨が降り、風が更に強まっていた。
炊事場に放置していたイスは大丈夫だろうか、酔っ払って道具を放置していないかを心配した。


朝、早々に片付け、吾妻小富士に登ることにした。
この、ナメた格好でも、すぐ登れるのだ。
ビジターセンターの前に車を停める。
ここが、浄土平天文台だ。実は、土曜日の夜は、開館していて、浄土平野営場から歩けば見に行けるのだが、酔っ払った私は、星が好きなくせに、元よりそれを放棄していた。


標高1707m、吾妻小富士。
誰でも登れるように、階段がついている。
ゆっくりと登っていく。


振り返ると、絶景だ。
仙台から、たった2時間弱で、これまでの景色を見られるのだ。本当に凄い。




頂上だ。
頂上まで、10分もかからなかった。ちょろいもんである。
あの、とことん山の「動物たちの小道」の地獄坂の方が、100倍キツかった。
ああ、私はやったのだ。
吾妻小富士、単独無酸素無補給登頂!
なんて。




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