2016年06月03日
山歩き 船形山~泉ヶ岳 テント泊縦走 20160528
この時持っていった物
服装
服装 | 薄手のジャケット、パンツ、トレッキングシューズ |
ザック内(グレゴリー アルピニスト50)
テント | アライテント エアライズ1、グラウンドシート |
マット | モンベル U.L.コンフォートシステム パッド150 |
シュラフ | モンベル スパイラルダウンハガー #3、エアピロー |
クッカー類 | スノーピーク トレック900、イワタニプリムス P-153、250OD缶、シエラカップ、スポーク、割り箸 |
食料 | 握り飯1個、鍋の材料(ジップロック)、餅5個、ビール1本、ウイスキー、水(プラティパスビッグジップSL 2000ml入)、予備の水(プラティパス2 2000ml入)、行動食(アミノバイタルプロ、チータラ、チョコクッキー、柿の種)、非常食(アルファ米2個) |
雨具 | ザ・ノースフェイス レインテックス FLIGHT |
予備 | モンベル トレールアクショングローブ、靴下 |
地図 | GARMIN eTrex30(GPS)、地図、コンパス |
服 | ダウンジャケット、ダウンパンツ |
その他 | ラジオ、ナイフ、ヘッドライト、LEDランタン、熊鈴、ファーストエイドキット、ロールペーパー、ウェットティッシュ、コンパクトデジカメ、ウェアラブルカメラ、トレッキングポール、文庫本 |
食料の軽量化の為に、餅を初めて持って行く事にした。重ねて小さく持っていけるし、汁物に入れるだけでいいので、非常に調理しやすく食べやすい。1~2個で茶碗一杯分のエネルギーになるから、山用の食料としても申し分ない。夜に2個、朝に3個食べたが、かなりの満足感を得る事も出来た。2日目は行動食を摂らずに4時間行動してもバテなかった事を考えると、餅パワーが優秀であると感じられた。
ここ最近、行動食としてチータラ(チーズ鱈)を持って行っている。食べて美味いし、チーズのたんぱく質と油分、塩分もあるからバランスがいいように思うのだ。テント泊であれば、夜のつまみにもなる。これに加えてクッキーなどの甘い行動食があれば、結構いいのではないか。
5月27日、出張先からの帰りの飛行機。文庫本を持つ手がピンク色の光で染まった。外を見ると、夕焼けは既に終わりかけており、燃え上がる色から熾き火へと変化していた。空のグラデーションとは対照的に、雲海の中に黒い船形連峰が顔を出していた。
空から見える東北の山は、月山や岩手山などの立派な山に眼が行きがちで、船形連峰は大きさでも見栄えでも劣る。しかし、この時の雲海から飛び出た山体は黒々と強調されており、心に焼きつくようだった。船をひっくり返した船底のような形の船形山から、いくつかの小さなピークを持つなだらかな稜線へ繋がり、角度によっては双耳峰的に飛び出て見える泉ヶ岳へ帰結する。奥の方に蔵王連峰も見えたが、この時ばかりは船形連峰の方が倍も美しかった。
ふと見た窓の外に偶然にも船形連峰。本当に偶然だった。山からのメッセージだとしか思えなかった。どうしても「登りに来いよ」と言われているとしか思えなかった。何故、山が私を呼んでいるのか。折りしも、船形連峰はコシアブラのシーズンだからだった。
私が家に帰って真っ先にしたのは、ザックを取り出して翌日の山の準備に取り掛かることだった。

コシアブラの天ぷら。ビールの友。美しき自然の滋味よ。
コシアブラを採って採って採りまくるというのが、今回の山行の目的だ。もう採りたくない、もう持って帰れない、というほど採ってやる。船形山が飛行機の中の私をわざわざ呼びつけたのだから、今日ばかりは船形山は私の山だ。船形山のコシアブラは全部私のものだ。
いざ行かん、コシアブラ山行へ。

登山口の木々がかなり青々としていて、雰囲気が既に夏のようだ。ヒグラシの声もうるさいほどだ。思った以上に季節の進みが早いように感じる。
この時点で、コシアブラがのびきっていないか心配になるが、何故かそんな事にはならないような気がする。山が、のびきってしまった山菜を私に摘ませるような事はしないだろうからだ。そう勝手に思い込んでいる。私と船形山との、この一体感。

船形山は林間歩きが長い山で、林間を2時間半から3時間も黙々と歩き続けなければならない。言い方は悪いが、歩いていて飽きるのだ。
黙々と歩いていると、頭の中で佐久間一行の「井戸のおばけ」の歌が繰り返される。振り払っても振り払っても井戸のおばけがやってくる。脳内リフレインに合わせて口笛を吹いてみる。チクショウ。リズムが良くて、意外と調子が出てきやがる。何がコシアブラ山行だ。井戸のおばけ山行じゃねえか。脳内から一向に去らないニヤついた佐久間一行にイライラしていたら、升沢コースの中間地点である三光宮にいつの間にか到着した。
昨年は、この辺りから雪が見え始めたが、全く雪がない。雪自体が少ない冬だったが、更に融けるのも早かったのだろう。

ウヒョー!コシアブラちゃん!
指先でプチプチと摘んでいく。コシアブラ独特のいい香りが、摘むそばから漂ってくる。
こいつを天ぷらにして食べるのを想像するだけでビールが2本くらいいけそうだ。カラリと揚がってサクサクとした衣の下に透けて見える、コシアブラの緑と濃い紫色。それに塩をパラリとやって、わしゃと口に含む。一噛み二噛みするとほろ苦い味と共に、素晴らしい香りの春の精気が鼻を抜ける。そこへおもむろにビールを流し込む。あああああ、食いてええええ。
最初から大きい木に当たり、夢中で摘んでいたら、あっという間に袋がいっぱいになった。幸先いいぞ。


升沢避難小屋。この先は、沢になっているから、しっかり準備をしてから向かおう。昨年は、雪渓登りで一気に高度を稼げたが、ここまで来る間の雪の状態を考えると、それは難しいかも知れない。
沢沿いや残雪の近くは、私の大嫌いなブユ(ブヨ)が多くなる。肌を露出しないようにし、ハッカ油をシュッシュとスプレーして進もう。

ブラックダイヤモンドのアルパインスタートフーディー。わずか250gのウインドブレーカーで、胸ポケットをひっくり返して突っ込むと、非常にコンパクトに収納出来るジャケットだ。こうしたウルトラライトなジャケットは、パタゴニアのフーディニジャケットが先駆者として有名で、フォロワー的アイテムが最近増えてきている。こちらのアルパインスタートフーディーは、ショーラーという生地を使用していてナイロン特有のシャカシャカ感が抑えられているのと、ストレッチ性が高い特長があったので、こちらを選んだ。細身の作りというのもあり、大変気に入っている。


小屋脇の沢を左に右に渡渉を繰り返しながら登って行く。案の定、雪は殆どなく、ようやく最上部の辺りであるかなしかの雪渓を上っていくが、踏み抜きの不安が勝って楽しさは全く無かった。

沢を登りきった辺りにもコシアブラが良く生えていて、急登でハァハァと乱れてしまった息を整えながら、コシアブラを摘みつつ休むという、黄金のコンビネーション。やはり、登るだけの単調な山よりも、別な目的を持って歩く方が100倍楽しいし、キツさも和らぐように感じる。

登り始めて3時間半、頂上だ。風も殆どなく、空の青も美しい。


頂上付近は、ミヤマキンバイが美しかった。しかし、私は食べられない植物に興味はないのだった。

泉ヶ岳方面へ向かう分岐点へ戻る道すがら、コシアブラの採取を忘れない。もうこの時点で中くらいの大きさの袋が2つパンパンになった。もっとだ。もっと採ってやる。

升沢分岐から泉ヶ岳方向に向かうと、一気にコシアブラの木が多くなる。袋を片手に、状態のいい芽だけを摘んで行く。摘んでは歩き、歩いては摘む。立ち止まる回数が多くて、なかなか進まないが、楽しくてやっているのだから仕方が無い。

楽しいとはいいつつも、ザックの中のコシアブラの重さがこたえる。ついに3つ目の袋がパンパンになった所で、しんどくなってしまった。袋1つ当たり1kg以上はある。
もういいんじゃないか。おすそ分けを考えても、量はもう十分だ。採らずに残しておいても、このまま誰も採らずにのびきるだけだろうが、その方が木にとっていいのは確かなのだ。よし、コシアブラはここまでで終わりにしよう。楽しかった。山よ春の恵みをありがとう。

三峰山で一休みする。三峰山は藪だらけで、藪漕ぎしながら歩くのがいつもの事だったが、藪が仮払いされていて、快適に歩く事が出来るようになっていた。
山頂付近は視界が開けていて、このコースでは一番好きな場所だ。ザックを下ろして、行動食を食べる。
虫が異常なほどアタックして来るが、ブユではなく、ハエのようだ。ハッカ油もあまり効果が得られない。それにしても、この虫の多いシーズン、虫の多い山というのは、本当に嫌になる。虫対策に不備があると言われればそうなのだが、冬の快適な山登りを考えると、冬に戻りたくなる。

三峰山を過ぎてからも、藪は綺麗に払われていた。昨年のトレイルランニングの大会にあわせて手入れされたのだろうか。手入れをして下さった方たち、本当にありがとう。

長倉尾根を2時間歩く。
熊ノ平辺りで、タケノコが生えていたので採集する。しかし、タケノコ採りをしていて、熊に襲われて亡くなるというニュースが2件あったばかりで、ビビってしまって集中出来ない。

本日の最終目的地である水源。平らな場所で近くに水場があるので、私のような酔狂がテント場として利用する事がある。平らなスペースの脇に新しい焚き火の跡があり、誰かが利用した事が伺える。私も焚き火がやりたい。
テントを張る前にやる事がある、水場の冷たい流水でビールを冷やすのだ。ビールを水に浸すと、ぬるかったのががみるみる冷えていく。
今回は荷物を減らしてビール1本だけにしたが、今になって激しく後悔している。この疲れと喉の渇きを癒してくれるビールが、1本しかないなんて!

いつものテント。いつものように。そろそろ別なテントも欲しい。ドマドームとか。
外は虫の天国なので、テントの中で過ごす。何度かテントを出入りした際に、虫が数匹入り込んでしまって、外に出すのに苦労する。

っかーーーーっ!!

いつもの鍋キューブで。腹も減っていて、肉も野菜もモリモリと食が進む。具を殆ど食べてしまった所で、餅を2個投入する。グツグツと軽く煮込んで餅が柔らかくなったら食べる。美味い。簡単なのに最高に美味い。胃もだいぶ落ち着いた。この餅はいい。コンパクトに持ち歩けるし、満足度も高い。ゴミも出ないし、食器も殆ど汚れない。1食当たり餅3個くらいあれば十分だろうか。また餅を持って来よう。

夜はやる事がない。やる事がないというのも贅沢だ。
ラジオを聴くか、本を読むか。持って来た本が、興味深い内容ではあるのだが、あまり面白くなくてガッカリだった。もっと吟味すべきだった。
ビール1本では足りず、ウイスキーの水割りを飲む。味わう為ではなくて、酔う為に飲んでいるようなものだ。
夜中じゅう、変な鳴き声のような音がずっとしていて、最初は不気味だと思ったが、山とはこういうものだと酔いの思考に任せるままにして、そのまま寝た。変な鳴き声は子守唄になった。

朝5時起床。昨日の採集結果を改めて確認する。ザックに詰めて炎天下を歩いていたので、その熱を取る為に袋の口を開けて、外に出しておいたのだった。袋3つのコシアブラ。葉が若干しなしなになってしまっているが、昨日の状態と比べると大分回復したようだ。

昨日の鍋の残り汁で餅を食べたら出発しよう。今日はもう帰る事しか頭に無い。さくさく登って、さっさと帰ろう。

水源、桑沼分岐点、北泉ヶ岳、三叉路を経て泉ヶ岳へ向かう。山頂の手前が一番眺めがいい。蔵王連峰・二口山塊と船形連峰の間に朝日連峰が見える。残雪が想像以上に残っていて美しい。7月上旬にあそこを全山縦走する事を思い出してワクワクする。

いつもの泉ヶ岳山頂。時間が早いから、誰も居ない。人の居ない泉ヶ岳はやや不気味だ。

帰りは表コースで下る。傾斜がきつく、下るには最悪のルートだった。泉ヶ岳は水神コースが一番だ。
何と言うか、トラブルもなく、私らしからぬ山だった。

Posted by at 19:58│Comments(8)
│山歩き
この記事へのコメント
健康そうな良いコシアブラですねえ!
毎年採られる木では貧弱になってしまいますからね・・・
こちらでは「みず」の季節、きざむと粘りが出て冷や汁の素に良いですよ。
毎年採られる木では貧弱になってしまいますからね・・・
こちらでは「みず」の季節、きざむと粘りが出て冷や汁の素に良いですよ。
Posted by ジープ at 2016年06月05日 22:11
ジープさん。こんにちは。ご無沙汰しております。
私が不勉強なのかも知れませんが、毎年採られているコシアブラの木って、芽の出る箇所がこぶのように多岐化して、一度に沢山採れるようになっていませんか?
いっぱい採れるから採る側はいいですけど、あれはあれで負担になって生長していないって事なのでしょうね。
いいですね、ミズ。クセなく食べられますよね。
赤い根っこ付近のネバネバ感!
実も食べられるし、夏も楽しめる貴重な山菜ですよね。
私が不勉強なのかも知れませんが、毎年採られているコシアブラの木って、芽の出る箇所がこぶのように多岐化して、一度に沢山採れるようになっていませんか?
いっぱい採れるから採る側はいいですけど、あれはあれで負担になって生長していないって事なのでしょうね。
いいですね、ミズ。クセなく食べられますよね。
赤い根っこ付近のネバネバ感!
実も食べられるし、夏も楽しめる貴重な山菜ですよね。
こんばんは。
ごぶさたしております。
すっかりアウトドアからはフェードアウトなさったのかなと思案しておりましたが、安心しました(笑)
本格的な梅雨入りを前に山中泊を考えていましたが、やはり船形連峰は若干虫が多めのようですね。
それにしても、コシアブラは垂涎モノですね。
これに氾濫原で釣り上げたイワナと冷えた伯楽星があれば天国です!
ごぶさたしております。
すっかりアウトドアからはフェードアウトなさったのかなと思案しておりましたが、安心しました(笑)
本格的な梅雨入りを前に山中泊を考えていましたが、やはり船形連峰は若干虫が多めのようですね。
それにしても、コシアブラは垂涎モノですね。
これに氾濫原で釣り上げたイワナと冷えた伯楽星があれば天国です!
Posted by 74moon at 2016年06月07日 01:17
74moonさん。こんにちは。こちらこそご無沙汰しております。
フェードアウトなんて、とんでもない!
春は山菜採りをしたり、渓流釣りをしたり、自然と遊んでいました。
どちらかというと、山登りが多かったような気がするので、そうした記録は、やっぱヤマレコがいいんでしょうか。
氾濫原はイワナが釣れるのですか?大倉山ですよね。
釣ったイワナを焚き火にかけ、その明かりをたよりに一献かたむける。
あああああ!やりたいやりたい!今すぐやりたい!
フェードアウトなんて、とんでもない!
春は山菜採りをしたり、渓流釣りをしたり、自然と遊んでいました。
どちらかというと、山登りが多かったような気がするので、そうした記録は、やっぱヤマレコがいいんでしょうか。
氾濫原はイワナが釣れるのですか?大倉山ですよね。
釣ったイワナを焚き火にかけ、その明かりをたよりに一献かたむける。
あああああ!やりたいやりたい!今すぐやりたい!
こんばんは。
件の沢にはイワナが生息していますよ
。
昔の上司達が30年以上前に下流の花川辺りから釣り上げて移植放流したと聞いています。
ただ、川のキャパが小さいので魚が大きくなれないようです。
年に数回だけ、山の神様におすそ分けをいただいています。
上流に人工物がないので、なめろうにして食べますよ♪
件の沢にはイワナが生息していますよ
。
昔の上司達が30年以上前に下流の花川辺りから釣り上げて移植放流したと聞いています。
ただ、川のキャパが小さいので魚が大きくなれないようです。
年に数回だけ、山の神様におすそ分けをいただいています。
上流に人工物がないので、なめろうにして食べますよ♪
Posted by 74moon at 2016年06月07日 21:04
更新楽しみにしていました。
次の更新も期待してます!!
次の更新も期待してます!!
Posted by クロミー
at 2016年06月07日 22:47

74moonさん。
知る人ぞ知る、イワナポイントなのですね。
砂防ダムなんかで魚が上流に登れない環境も多くなる中で、自然を守る為に、移植放流なさったなんて、素晴らしいですね。
私も、ちょっとだけ山の神様のおすそ分けに預かりたいです。
知る人ぞ知る、イワナポイントなのですね。
砂防ダムなんかで魚が上流に登れない環境も多くなる中で、自然を守る為に、移植放流なさったなんて、素晴らしいですね。
私も、ちょっとだけ山の神様のおすそ分けに預かりたいです。
クロミーさん。こんにちは。
不定期な更新で申し訳ありませんが、また来てくださいね!
不定期な更新で申し訳ありませんが、また来てくださいね!
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