2016年06月03日
山歩き 船形山~泉ヶ岳 テント泊縦走 20160528
この時持っていった物
服装
服装 | 薄手のジャケット、パンツ、トレッキングシューズ |
ザック内(グレゴリー アルピニスト50)
テント | アライテント エアライズ1、グラウンドシート |
マット | モンベル U.L.コンフォートシステム パッド150 |
シュラフ | モンベル スパイラルダウンハガー #3、エアピロー |
クッカー類 | スノーピーク トレック900、イワタニプリムス P-153、250OD缶、シエラカップ、スポーク、割り箸 |
食料 | 握り飯1個、鍋の材料(ジップロック)、餅5個、ビール1本、ウイスキー、水(プラティパスビッグジップSL 2000ml入)、予備の水(プラティパス2 2000ml入)、行動食(アミノバイタルプロ、チータラ、チョコクッキー、柿の種)、非常食(アルファ米2個) |
雨具 | ザ・ノースフェイス レインテックス FLIGHT |
予備 | モンベル トレールアクショングローブ、靴下 |
地図 | GARMIN eTrex30(GPS)、地図、コンパス |
服 | ダウンジャケット、ダウンパンツ |
その他 | ラジオ、ナイフ、ヘッドライト、LEDランタン、熊鈴、ファーストエイドキット、ロールペーパー、ウェットティッシュ、コンパクトデジカメ、ウェアラブルカメラ、トレッキングポール、文庫本 |
食料の軽量化の為に、餅を初めて持って行く事にした。重ねて小さく持っていけるし、汁物に入れるだけでいいので、非常に調理しやすく食べやすい。1~2個で茶碗一杯分のエネルギーになるから、山用の食料としても申し分ない。夜に2個、朝に3個食べたが、かなりの満足感を得る事も出来た。2日目は行動食を摂らずに4時間行動してもバテなかった事を考えると、餅パワーが優秀であると感じられた。
ここ最近、行動食としてチータラ(チーズ鱈)を持って行っている。食べて美味いし、チーズのたんぱく質と油分、塩分もあるからバランスがいいように思うのだ。テント泊であれば、夜のつまみにもなる。これに加えてクッキーなどの甘い行動食があれば、結構いいのではないか。
5月27日、出張先からの帰りの飛行機。文庫本を持つ手がピンク色の光で染まった。外を見ると、夕焼けは既に終わりかけており、燃え上がる色から熾き火へと変化していた。空のグラデーションとは対照的に、雲海の中に黒い船形連峰が顔を出していた。
空から見える東北の山は、月山や岩手山などの立派な山に眼が行きがちで、船形連峰は大きさでも見栄えでも劣る。しかし、この時の雲海から飛び出た山体は黒々と強調されており、心に焼きつくようだった。船をひっくり返した船底のような形の船形山から、いくつかの小さなピークを持つなだらかな稜線へ繋がり、角度によっては双耳峰的に飛び出て見える泉ヶ岳へ帰結する。奥の方に蔵王連峰も見えたが、この時ばかりは船形連峰の方が倍も美しかった。
ふと見た窓の外に偶然にも船形連峰。本当に偶然だった。山からのメッセージだとしか思えなかった。どうしても「登りに来いよ」と言われているとしか思えなかった。何故、山が私を呼んでいるのか。折りしも、船形連峰はコシアブラのシーズンだからだった。
私が家に帰って真っ先にしたのは、ザックを取り出して翌日の山の準備に取り掛かることだった。
コシアブラの天ぷら。ビールの友。美しき自然の滋味よ。
コシアブラを採って採って採りまくるというのが、今回の山行の目的だ。もう採りたくない、もう持って帰れない、というほど採ってやる。船形山が飛行機の中の私をわざわざ呼びつけたのだから、今日ばかりは船形山は私の山だ。船形山のコシアブラは全部私のものだ。
いざ行かん、コシアブラ山行へ。
登山口の木々がかなり青々としていて、雰囲気が既に夏のようだ。ヒグラシの声もうるさいほどだ。思った以上に季節の進みが早いように感じる。
この時点で、コシアブラがのびきっていないか心配になるが、何故かそんな事にはならないような気がする。山が、のびきってしまった山菜を私に摘ませるような事はしないだろうからだ。そう勝手に思い込んでいる。私と船形山との、この一体感。
船形山は林間歩きが長い山で、林間を2時間半から3時間も黙々と歩き続けなければならない。言い方は悪いが、歩いていて飽きるのだ。
黙々と歩いていると、頭の中で佐久間一行の「井戸のおばけ」の歌が繰り返される。振り払っても振り払っても井戸のおばけがやってくる。脳内リフレインに合わせて口笛を吹いてみる。チクショウ。リズムが良くて、意外と調子が出てきやがる。何がコシアブラ山行だ。井戸のおばけ山行じゃねえか。脳内から一向に去らないニヤついた佐久間一行にイライラしていたら、升沢コースの中間地点である三光宮にいつの間にか到着した。
昨年は、この辺りから雪が見え始めたが、全く雪がない。雪自体が少ない冬だったが、更に融けるのも早かったのだろう。
ウヒョー!コシアブラちゃん!
指先でプチプチと摘んでいく。コシアブラ独特のいい香りが、摘むそばから漂ってくる。
こいつを天ぷらにして食べるのを想像するだけでビールが2本くらいいけそうだ。カラリと揚がってサクサクとした衣の下に透けて見える、コシアブラの緑と濃い紫色。それに塩をパラリとやって、わしゃと口に含む。一噛み二噛みするとほろ苦い味と共に、素晴らしい香りの春の精気が鼻を抜ける。そこへおもむろにビールを流し込む。あああああ、食いてええええ。
最初から大きい木に当たり、夢中で摘んでいたら、あっという間に袋がいっぱいになった。幸先いいぞ。
升沢避難小屋。この先は、沢になっているから、しっかり準備をしてから向かおう。昨年は、雪渓登りで一気に高度を稼げたが、ここまで来る間の雪の状態を考えると、それは難しいかも知れない。
沢沿いや残雪の近くは、私の大嫌いなブユ(ブヨ)が多くなる。肌を露出しないようにし、ハッカ油をシュッシュとスプレーして進もう。
ブラックダイヤモンドのアルパインスタートフーディー。わずか250gのウインドブレーカーで、胸ポケットをひっくり返して突っ込むと、非常にコンパクトに収納出来るジャケットだ。こうしたウルトラライトなジャケットは、パタゴニアのフーディニジャケットが先駆者として有名で、フォロワー的アイテムが最近増えてきている。こちらのアルパインスタートフーディーは、ショーラーという生地を使用していてナイロン特有のシャカシャカ感が抑えられているのと、ストレッチ性が高い特長があったので、こちらを選んだ。細身の作りというのもあり、大変気に入っている。
小屋脇の沢を左に右に渡渉を繰り返しながら登って行く。案の定、雪は殆どなく、ようやく最上部の辺りであるかなしかの雪渓を上っていくが、踏み抜きの不安が勝って楽しさは全く無かった。
沢を登りきった辺りにもコシアブラが良く生えていて、急登でハァハァと乱れてしまった息を整えながら、コシアブラを摘みつつ休むという、黄金のコンビネーション。やはり、登るだけの単調な山よりも、別な目的を持って歩く方が100倍楽しいし、キツさも和らぐように感じる。
登り始めて3時間半、頂上だ。風も殆どなく、空の青も美しい。
頂上付近は、ミヤマキンバイが美しかった。しかし、私は食べられない植物に興味はないのだった。
泉ヶ岳方面へ向かう分岐点へ戻る道すがら、コシアブラの採取を忘れない。もうこの時点で中くらいの大きさの袋が2つパンパンになった。もっとだ。もっと採ってやる。
升沢分岐から泉ヶ岳方向に向かうと、一気にコシアブラの木が多くなる。袋を片手に、状態のいい芽だけを摘んで行く。摘んでは歩き、歩いては摘む。立ち止まる回数が多くて、なかなか進まないが、楽しくてやっているのだから仕方が無い。
楽しいとはいいつつも、ザックの中のコシアブラの重さがこたえる。ついに3つ目の袋がパンパンになった所で、しんどくなってしまった。袋1つ当たり1kg以上はある。
もういいんじゃないか。おすそ分けを考えても、量はもう十分だ。採らずに残しておいても、このまま誰も採らずにのびきるだけだろうが、その方が木にとっていいのは確かなのだ。よし、コシアブラはここまでで終わりにしよう。楽しかった。山よ春の恵みをありがとう。
三峰山で一休みする。三峰山は藪だらけで、藪漕ぎしながら歩くのがいつもの事だったが、藪が仮払いされていて、快適に歩く事が出来るようになっていた。
山頂付近は視界が開けていて、このコースでは一番好きな場所だ。ザックを下ろして、行動食を食べる。
虫が異常なほどアタックして来るが、ブユではなく、ハエのようだ。ハッカ油もあまり効果が得られない。それにしても、この虫の多いシーズン、虫の多い山というのは、本当に嫌になる。虫対策に不備があると言われればそうなのだが、冬の快適な山登りを考えると、冬に戻りたくなる。
三峰山を過ぎてからも、藪は綺麗に払われていた。昨年のトレイルランニングの大会にあわせて手入れされたのだろうか。手入れをして下さった方たち、本当にありがとう。
長倉尾根を2時間歩く。
熊ノ平辺りで、タケノコが生えていたので採集する。しかし、タケノコ採りをしていて、熊に襲われて亡くなるというニュースが2件あったばかりで、ビビってしまって集中出来ない。
本日の最終目的地である水源。平らな場所で近くに水場があるので、私のような酔狂がテント場として利用する事がある。平らなスペースの脇に新しい焚き火の跡があり、誰かが利用した事が伺える。私も焚き火がやりたい。
テントを張る前にやる事がある、水場の冷たい流水でビールを冷やすのだ。ビールを水に浸すと、ぬるかったのががみるみる冷えていく。
今回は荷物を減らしてビール1本だけにしたが、今になって激しく後悔している。この疲れと喉の渇きを癒してくれるビールが、1本しかないなんて!
いつものテント。いつものように。そろそろ別なテントも欲しい。ドマドームとか。
外は虫の天国なので、テントの中で過ごす。何度かテントを出入りした際に、虫が数匹入り込んでしまって、外に出すのに苦労する。
っかーーーーっ!!
いつもの鍋キューブで。腹も減っていて、肉も野菜もモリモリと食が進む。具を殆ど食べてしまった所で、餅を2個投入する。グツグツと軽く煮込んで餅が柔らかくなったら食べる。美味い。簡単なのに最高に美味い。胃もだいぶ落ち着いた。この餅はいい。コンパクトに持ち歩けるし、満足度も高い。ゴミも出ないし、食器も殆ど汚れない。1食当たり餅3個くらいあれば十分だろうか。また餅を持って来よう。
夜はやる事がない。やる事がないというのも贅沢だ。
ラジオを聴くか、本を読むか。持って来た本が、興味深い内容ではあるのだが、あまり面白くなくてガッカリだった。もっと吟味すべきだった。
ビール1本では足りず、ウイスキーの水割りを飲む。味わう為ではなくて、酔う為に飲んでいるようなものだ。
夜中じゅう、変な鳴き声のような音がずっとしていて、最初は不気味だと思ったが、山とはこういうものだと酔いの思考に任せるままにして、そのまま寝た。変な鳴き声は子守唄になった。
朝5時起床。昨日の採集結果を改めて確認する。ザックに詰めて炎天下を歩いていたので、その熱を取る為に袋の口を開けて、外に出しておいたのだった。袋3つのコシアブラ。葉が若干しなしなになってしまっているが、昨日の状態と比べると大分回復したようだ。
昨日の鍋の残り汁で餅を食べたら出発しよう。今日はもう帰る事しか頭に無い。さくさく登って、さっさと帰ろう。
水源、桑沼分岐点、北泉ヶ岳、三叉路を経て泉ヶ岳へ向かう。山頂の手前が一番眺めがいい。蔵王連峰・二口山塊と船形連峰の間に朝日連峰が見える。残雪が想像以上に残っていて美しい。7月上旬にあそこを全山縦走する事を思い出してワクワクする。
いつもの泉ヶ岳山頂。時間が早いから、誰も居ない。人の居ない泉ヶ岳はやや不気味だ。
帰りは表コースで下る。傾斜がきつく、下るには最悪のルートだった。泉ヶ岳は水神コースが一番だ。
何と言うか、トラブルもなく、私らしからぬ山だった。
タグ :山歩き
2016年03月08日
ソロキャンプ 宮城県某所 20160305
2016年3月5日 宮城県某所
キャンプをしながら焚き火で渓魚を炙って食べたかったので、出かけてみた。
昨年、宮城でも大雨によって堤防が決壊するほどの被害があった。その影響で、沢にもダメージがあったようだった。
この時持っていった物
服装
服装(移動時) | アンダーウェア上下、フリース、パンツ、ネオプレンソックス、渓流シューズ |
服装(キャンプ時) | アンダーウェア上下、フリース、パンツ、マウンテンパーカ、ニット帽、スニーカ |
ザック内(グレゴリー バルトロ65)
テント | アライテント エアライズ1、グラウンドシート |
マット | モンベル コンフォートシステムパッド150 |
シュラフ | モンベル スパイラルダウンハガー #0、エアピロー、イスカ ゴアテックスシュラフカバーウルトラライト ワイド |
クッカー類 | ダグ 焚火缶、エバニュー ハンドル、イワタニプリムス P-153、250OD缶、シエラカップ、割り箸 |
食料 | 鍋の材料(ジップロック)、予備食料、ビール3本、スキットル入りウイスキー、水1L |
イス | ドッペルギャンガー フォールディング 超々ジュラルミン |
服 | ダウンジャケット、ダウンパンツ、ダウンブーツ、マウンテンパーカ、スニーカー |
冬装備 | THERMOS 山専ボトル、ブラックダイヤモンド ディプロイ3 |
釣り道具 | 竿、仕掛け(ミャク釣り、チョウチン釣り)、エサ(ミミズ)、毛ばり |
その他 | ラジオ、ナイフ、ヘッドライト、LEDランタン、ファーストエイドキット、トイレットペーパー、ウェットティッシュ、コンパクトデジカメ、ウェアラブルカメラ、トレッキングポール(スノーバスケット装着)、文庫本 |
冬は荷物が多い。寒さ対策、雪対策で否が応にも増えてしまう。荷物を減らすためにマットをリッジレストではなく、モンベルのエアマットにするという、ささやかな抵抗を試みたのだが、地面からの冷えが思った以上に強くて、夜中に何度も目を覚ましてしまった。
今年の冬は、異常な天候だったので、現地の雪の量が読めなかった。昨年の今頃は、雪だらけでスノーシューが必要だったので、スノーシューもアイゼンも準備して行ったが、今年は所々に雪がへばりついているだけだった。出発前に不要な冬装備を削ったつもりだったが、最終目的地の雪も少なく、スノースコップも結果的に不要になった。今年は装備の選定も難しい。
そして、渓流釣り時の足回りと、キャンプ時の足回りは同じものを使用出来ない。移動時は水に入れるもの、キャンプ時はそれを脱いで履けるもの、と分けなければならない。これがなければ荷物を減らせるのだろうが、釣りをやろうというのだから、こればかりはどうしようもない。
最後に、ドッペルギャンガーのイスは、持って行って失敗した。持っているローチェアは雪の場合だと、尻が雪で濡れてしまうので、座高が高めのこちらのイスを持ち込んだが、現地は雪も殆どなく、座っては苦痛だった。快適さをとるか、苦痛でも軽さをとるか、難しい所ではあるが、限界はあるという事を再認識した。
今回は、解禁日が過ぎたばかりの渓流に入り、釣りをしながら夕食の食料を調達するという、プチサバイバル的なソロキャンプを計画してみた。勿論、釣れなかった時の為と、温まる為の鍋の材料は持ち込むが、メインは渓流の魚たちだ。釣果を食料計画に組み込むという事は、貧相な夕食になるリスクもあるが、たった一回の食事への影響なので、仮にそうなったとしても大した事ではない。渓魚の調達も、釣った実績のある沢に入るので、釣れないという心配も無いだろう。
釣りの仕掛けはエサ釣りで、エサはミミズだ。過酷な環境に住んでいるイワナは何でも食う。エサが豊富な環境にいる魚はエサを選り好みするが、今回の行き先は水溜りのような砂防ダム下の淵なので、ミミズを食わないという事はないだろう。仕掛けは基本的にはチョウチン釣りで、竿の半分くらいの長さの道糸(竿に直接結ぶ糸)に錘と針を付けただけの、シンプルなものだ。今回はやや長めにチョウチン釣りの仕掛けを作ってしまったので手返しが悪かったが、これは途中で調整すべきだったかも知れない。
さて、現地へ向かう。仙台から1時間くらいの場所だ。雪があるかどうかは、付近のライブカメラでチェックはしていたが、3月上旬にあって、ここまで雪がないとは思わなかった。雪に踏み跡はない。今シーズン、解禁してから人が入っていないのだ。これは期待出来る。
雪に足を乗せてみると、殆ど沈まないので、スノーシューは不要そうだ。車に残置しよう。
最初はイワナの釣れる沢に入る。昨年、弟とタラノメを採りつつイワナを釣った場所だ。ここは結構釣れた実績のある沢なので、期待出来る。本日のキャンプ地は隣の沢だが、隣はやや渋い印象があるので、夕食はここでの釣果次第という事になりそうだ。
所々、雪が解けた場所からフキノトウが顔を覗かせている。持ち帰って天ぷらにして食べよう。この時期の山菜は、フキノトウ程度しか採れないので、これをキャンプの食料にする事は出来ない。もう少し経てば、コゴミ、タラノメなどの採って楽しい、食べて美味しい・・・という山菜も芽吹いてくる。山菜はタイミングが合うかどうかが大きな問題だが、今年も採れる事を楽しみにしている。
沢が荒れている。昨年の大雨のダメージのようだ。土砂が流れ出て地形が変わってしまった場所もある。これは魚にも影響があるかも知れない。
釣れるだろうと目論んでいたポイントにエサを投入するも、魚の反応がない。いくつかの場所を試してみるも、同じく反応が出ない。何かがおかしい。
渓流釣りは足で釣る釣りだ。釣れなければ移動するだけだ。良さそうなポイントで竿を出しつつも奥へと向かう。
昨年、元気なイワナが飛び出した砂防ダムの下に到着した。やはりここも少し様子が変わっている。少し淵が浅くなった様に感じるのだ。上流から堆積物となるものが流れて来たのだろう。
その淵(水溜り)へ早速仕掛けを投入する。グンと竿に反応があった。手応えは小さいものの、イワナの黄色い腹が見えた。周囲の木に注意しながら竿を手早く短く調整し、道糸を手繰り寄せる。やった。まずは一匹目だ。20cmちょっとの小さなイワナだが、焚き火でコイツの塩焼きが炙られている様を想像するとニヤけてくる。
この調子でいこう。
再び上流へ向かって進む。砂防ダムを乗り越える時の、斜面にへばりついた残雪をトラバースするのに神経を使う。ここで残雪が滑り落ちたり、足を踏み外すと、結構な怪我になる。渓流シューズのフェルト生地のソールが心もとないが、残雪に蹴りこんで確実にスタンスを切って降りきることが出来た。
さあ、ここが本日の本命ポイントだ。ここに至るまで、途中で何度か竿を出したものの反応は得られなかったが、ここでは間違いなく魚が釣れる予感がする。
水面に自分の姿が映りこまない距離感で竿の穂先をポイントへと向ける。エサが入るやいなや、流れ動く目印がピタッと止まった。アタリだ。イワナのアタリはあまりシビアではない。向こうアワセでいいくらいだ。一息おいてアワセる。グングングネグネという手応えがあった。結構デカい。コイツを引っこ抜くにはハリス(道糸から針を繋ぐ糸で道糸より細い)が細くて切れてしまいそうだ。一瞬の逡巡ののち方策なく引っこ抜くと、空中でイワナが暴れ、ハリスが切れてしまった。逃した魚はデカいというが、夕食のメインになりそうなサイズを逃しただけに、だいぶガックリときた。
もう一度仕掛けを投入する。再びアタリが出る。今度は手応えが小さい。今度は大丈夫だろうと引っこ抜く。げぇーーーっ!!またしてもバラす。ハリスは切れていない。針が外れたのだ。今回、いつも使っている針から別な形のものに変えている。これの影響だろうか。
運が味方していない日のような気がしてきた。
隣の沢に移動しよう。
キャンプ装備一式のザックをグイと背負うと、重くて息が漏れる。ウェストベルトを締めると加重が分散され、重さを感じにくくなった。最近は冬用のアルパインザックばかり背負っていたので、この久々の安定感に驚く。それでも荷物に水物が多く20kgはオーバーしているので、なかなかの負荷だ。ゆっくり歩くも、じわりと汗が出てきた。
林道が崩れている場所から、一旦ルートを外れ沢へ下る。重いザックを背負っていく必要はないので、釣り道具だけを持って、ザックはデポして進んだ。
こちらの沢は渓相が穏やかで歩きやすい。最初のポイントの砂防ダムの下へ向かう。砂防ダムの最上部から水が落ちてくるが、雪解けシーズンなので、水量が凄い。
こちらではヤマメが釣れる。ヤマメは、イワナに比べると神経質な魚だ。やや慎重にアプローチして、エサを流す。
何度か繰り返すも反応が出ない。時間帯が良くないというものあるが、解禁直後の最初の釣り人の仕掛けに反応もしないのが不思議だ。私がヘタクソなのは認めるが、もうちょっと姿を見せてくれてもいい筈だ。大雨の所為にばかりにも出来ないが、その影響で魚影が薄くなってしまったのではないかと考えながら竿を振る。
駄目だこりゃ。ねばっても意味がない。
こういう時は、山菜と戯れるに限る。魚は逃げる。山菜は逃げない。先ほどまでの沢は、ここより100m近く標高が高いので、雪も豊富でフキノトウも閉じていたが、こちらのフキノトウはフキノトウらしい可愛い姿をしている。さっき採取した方は天ぷらに、こちらはバッケ味噌(フキノトウ味噌)がいいだろう。
キャンプ予定地の砂防ダムに到着する。砂防ダムがいい風除けになるので、気に入っている場所なのだ。
その砂防ダムの上から周囲を見ると、様子が大きく変わった事が解った。上流側は土砂が堆積した様な地形になっていたが、それが強い流れで押し流された後が見える。砂防ダムの最上部には、こんな高さまで届く筈がない流木が乗っかっている。下流側も地形に変化が見られる。どうやら想像以上に、昨年の大雨が強かったようだ。沢にも魚にも強いダメージがあったのだ。そう思う事で、釣れない自分を慰める事にしよう。
残雪を利用してテントを張る。雪の上は踏む事で平らに出来るので、寝心地が良いのだ。天気も良い事から、テントのペグダウンも適当でいいだろう。
ネオプレンソックスと渓流シューズ。ネオプレンソックスの脛部分が摩擦で削れてしまっている。ここから水が入ってくるようだった。そろそろ寿命だ。渓流シューズも、8年くらい前のものだ。こちらはもう少し使えそうだ。
本日の食料。
焚き火鍋の材料と焚火缶。予備の食料として、餅2個とたまごスープ。こういう徒歩でのキャンプは段取り9割だ。現地で材料を切ったりするのはナンセンス。美味い食事が出来るかどうかの勝負は、出発前に決しているのだ。
早々に装備も整理したら、私にはやる事が残っている。
ヤマメよ、本日最後の勝負だ。昨年、ここで私は尺には至らないだろうものの、28cmくらいのヤマメを釣っている。
どうアプローチしたのかを書くのが面倒臭いので結果を書いてしまうと、釣れなかったという事だ。クソが。
渓魚に囲まれた夕食とは程遠い、イワナ一匹と焚き火鍋の貧相な夕食が確定した。焚き火をしながら自分を慰めるしかない。幸いにも薪となる流木は一晩で燃やし尽くせないほど転がっている。
焚き火をする位置を決め、流木を整理していて気が付いた。ガムテープを巻いてあるライターを持ってくるのを忘れた。ガムテープは火口として優秀で、少し流木が湿っていても、手順さえ間違えなければ火を熾す事が出来るので、毎回助けられている。
周囲を見渡すと、草の根っこが転がっている。良い具合に乾いているものもある。これだ。これを火口にするのだ。
やっつけで準備して火を点ける。乾いた根っこが一気に燃え上がり、準備が不十分で流木に火が移る前に消えてしまった。
丁寧さが足りない。自然と真摯に向き合わねばならない。火口となる草の根っこは草本体から毟って丸くし、草本体は最初に火を移す細枝として使用する。それに加えてスカスカで燃えやすそうなイタドリの枯れ枝を割って使う。これらに火が回った所で、細い流木をくべ、太い流木をくべ・・・よし、これでいこう。
作戦通り焚き付けは成功した。雪解けの影響で流木が湿りがちの状態だったので、少しほっとする。
転がっている枯れ枝を拾い、釣り上げた小さなイワナを刺す。準備してきた塩を塗りたくり、焚き火にかける。焚火缶に沢の水を汲み、火にかける。ウーン、この様になる画はどうだ。焚き火、イワナ、黒光りする焚火缶、このコントラスト。ハードな男の世界だ。私は原始人だ。
小さくて身の少ないイワナを食べ、焚き火鍋を食べる。イワナは骨酒が美味いので、熱燗に食べ終わった骨をぶち込みたいが、こういうキャンプではそれも叶わない。
焚き火鍋は鍋キューブでの味付けから、プチッと鍋という小さな液体スープタイプの調味料に変えてみた。これは正解だった。鍋キューブは、インスタントラーメンを思わせる味だが、こちらは中々美味い。液体だと少し重くなるので敬遠していたが、ビールを3本も担いで持って来ている事を考えると、こんなものは誤差だ。次もプチッと鍋を使ってみよう。
冷えてきた。持参のダウンジャケットとダウンパンツをインナー、マウンテンパーカをアウターとして着込むが、それでも結構冷える。空気の湿度が高い所為か、随分とひんやりするようだ。
テントの中に引っ込んで、ウイスキーのお湯割を飲みながら、本でも読もう。お湯はテルモスに詰めて持ってきたので、使い勝手が良い。
やや熱々のウイスキーのお湯割を飲みつつ、羽根田治の遭難ドキュメントの本を読む。ネット上で遭難ものの手記を最近読んでいて、ゾクリをしたのを思い出す。自分にも降りかかりかねない事だと思うと、里山だろうとこうして入っていくのが怖くもなる。山歩きでも、キャンプでも、そうならないように自己防衛の為の装備は準備はしているが、こうした危機意識と緊張感は常に持っておいた方がいいものだろう。
夜半から朝方にかけて、霧雨が降った。ポツポツという雨音を聞きながら、夜を過ごした。
翌朝。
テント設営時のペグダウンが甘かった所為で、テントの中は結露だらけになった。テント内部の側面は濡れ、スタッフサックやザックの中に仕舞っていなかった装備は湿っている。テント内は不快な状態なので、とっとと帰ってしまいたい。
私は宿泊翌日にダラダラするのが好きではない。翌日に行動をあまりしないのであれば、朝食も摂らなくても平気だったりする。一人で行動し、一人で判断する。気分次第でどうとでも動けるのが良い。
霧雨で濡れてしまったテントをたたむ。スニーカーから渓流シューズに履き替えるのも面倒なので、このまま帰る事にする。よし、準備は整った。
帰る前にする事がある。最後の大勝負だ。
結論を書くと、ヤマメはかかったけどバラしたんだよ!クソ!釣り人失格!
タグ :ソロキャンプ
2016年02月21日
雪山登山 蔵王連峰 雁戸山 20160212
厳冬期の雁戸山に挑戦してみよう。これまで私の山は山歩きだったが、積雪期の雁戸山は登山と呼んでもいいのではないだろうか。
この時持っていった物
服装
ザック内(グレゴリー アルピニスト35)
防水対策として、80Lのスタッフバッグを使うようにした。ザック内部にこのスタッフバッグを広げ、この中に装備品をパッキングしていく。この巨大スタッフバッグを導入し、ちょっとしたパッキングテクニックを使う事によって、非常に効率良く詰め込む事が出来るようになる。
スコップとスノーソーを装備に加えるようにした。両方とも雪洞構築に使えるし、ピットチェックをするにも必要だ。雪崩の対策装備として、ビーコンとプローブも重要なのだが、基本的に一人で山に入るのであまり意味がないのと値段がクソ高いので、まだ購入に踏み切れないでいる。
最近はテルモスの他にペットボトルに入っているスポーツドリンクを持ち込むようにしている。雪山は基本的に暑い。暑いのに水分補給がしにくい。必然的に喉が乾くのだが、テルモスの湯が熱くて水分補給と呼べるほど短時間では沢山飲めない。冬山の休憩は体が冷えるので、短時間で休憩してすぐ出発せざるを得ないからだ。冷たい飲み物は体内を冷やすので余計にエネルギーを消費してしまうのだが、喉が乾いた状態で行動するよりも精神衛生的にも良いので、割り切って冷たい飲み物を持ち込む事にした。寒い山を歩き回り、火照った体に冷たい飲み物をグビグビ流し込むのは本当に美味い。
久しぶりに山の記事を書く。この雁戸山が会心の山行だったので書いてみる事にした。
今シーズンの冬は、キャンプより山という感じで遊んでいるのだが、正規の知識を持つ人と行動させて貰っていた結果、雪山での行動の仕方や考え方や生活技術など、スキルのステップアップを図る事が出来た様に思う。ただ、その得た知識も、実践が伴わなければ、それを自分のものにする事が出来たとは言えない。今回は再び一人の行動に立ち返り、やや難しい山に向き合ってみたい。
今回挑む山は北蔵王の盟主の雁戸山だ。
雁戸山は、急峻な登りと極細尾根を持つ蟻の門渡りと、頂上直下の突き上げるような登りが特徴的な山で、無積雪期は連続するロープ場がスリリングなのだという。まして積雪期の難易度は無積雪期の比ではなく、その時の雪質によっては、東北の中でもかなり高くなるという前評判だった。ヤマレコでは、冬の雁戸山は選ばれた者だけが頂上に到達できる…という話も出ているようで、私のような初級者には敷居の高さを感じる。
雁戸山は東北の山では珍しい事に、アイゼンとピッケルが必須だ。東北の山はスノーシューで雪を掻き分けながら山頂を目指すのが一般的なのだが、ここはスノーシューでは全く登れない傾斜が連続する為、アイゼンとピッケルが必要なのだ。
私はこの山の無積雪期は登った事がない。無積雪期に登った事がない山に突っ込んでいくのはセオリー外で危険なのだが、登ってみたくなったのだから仕方がない。いっちょやってみっか。
5時半自宅出発、7時現地スタート、11時頂上、13時下山完了で計画を組んだ。頂上まで3時間半程度の時間がかかるという余裕を持った想定と、初めての山である事を加味しても、かなり余裕のあるスケジュールになっている。
無積雪期の登山口である笹谷峠は冬期通行止めで車で入る事が出来ない。山形自動車道の関沢ICで降りて直ぐ脇の冬期通行止めゲート前に駐車エリアがあり、そこが積雪期の最もポピュラーな登り口になっている。ここは休日ともなると、車の停め場所もなくなるほどだという事だ。それもそうで、笹谷峠からは北蔵王雁戸山方面とハマグリ山・山形神室方面の2方向に入ることが出来、閉鎖ゲートからのアクセスがいい事といずれも眺めが良い山である事から人気が高いようなのだ。
その駐車エリアに到着すると、車が一台も停まっていない。私が一番乗りのようだ。平日という事もあって山に入る人が少ないのだろう。
閉鎖ゲートを越えてスタートする。
しっかりしたトレースが残っている。前日の祝日の天候が良かった事もあって人が沢山入っていたのだろう。独力で山に向かうという意味からは外れてしまうが、不案内な私にこのトレースは非常に助かる。しかしその一方で、トレースを追って歩く事のつまらないことつまらないこと。
笹谷峠に繋がるという旧道を歩きながら、八丁平を目指す。旧道を歩いていくと、八丁平にある送電塔が見えてくるので、トレースがない場合は、これを目指して歩くといいだろうか。
八丁平に到着した。目の前が開けている。先ほどまでつまらない林間歩きだったのだから、尚更気分が晴れる。ここまで30分から40分というところだろう。
モルゲンロートは終わってしまったが、日が昇り始めてさほど時間もたっていないので、日差しはまだ朝日という感じだ。
風の弱さ、青空、強い日差し、今日一日の好天が約束されたようなものだ。こんなに穏やかな厳冬期の冬山はなかなか無い。
八丁平からは、雁戸山方面とハマグリ山方面に分岐している。
ここから眺めるハマグリ山の盛り上がりが女性的で美しい。雪が少なくてだいぶ毛深く見えるが、オッパイのようだ。吸い付きたい。ハマグリ山は標高が1200mに満たないのに、森林限界を超えている。ハマグリ山の奥には山形神室と仙台神室が続いている。時間や体力次第で奥の山を目指す、という感じで進めそうなので、「もうちょっといってみるか」で挑戦しやすい山かも知れない。今シーズン、登ってみたい。
なだらかな八丁平を超えると広葉樹の樹林帯に入る。ここもトレースがしっかりしているので、これを利用する。冬山はルートファインディングも楽しみの一つだと思うが、それにはラッセルもつきものだ。今シーズンに限ってはラッセルはお腹いっぱいの状態なのもあって、ラッセルしなくて済んだのは助かった。トレースが1本しかないので、昨日のみんなは登りも下りもこれを辿ったのだろうか。下りなんてトレースを使わずにフカフカの雪を踏んで下った方が楽なのに。
高度を徐々に上げるにつれ、背後のハマグリ山と山形・仙台神室が目と同じ高さに見えてくる。山形側に目を向けると、街並みの奥に月山、その左側に朝日連峰、更にその左に飯豊連峰が見える。天気が良いと、景色を楽しむために立ち止まってしまう回数がつい多くなってしまう。
カケスガ峰に到着した。森林限界を超え、奥には蔵王の山々が見えている。本日の目標である雁戸山もピラミダルな山容を見せて屹立している。雪面にはシュカブラが浮かび上がり、盛り上がった部分にはエビの尻尾が形成されている。ここが風が強い場所である事がわかる。
カケスガ峰から風の雰囲気が変わった。風自体は緩いのだが、肌を刺すような冷たさを感じるのだ。標高こそ1300mちょっとだが、日本海側から太平洋側に向かって蔵王らしい風が吹き抜ける。樹林帯では暑くてアンダーの上にシェルジャケットだけを着ていたが、寒さを感じて思わずミドルとネックウォーマーを装備した。
ここから先は、しっかりしたトレースはない。風の流れを読み、雪庇に注意しながら進もう。
カケスガ峰から前山のあたりまで歩いてくると、雁戸山の山体が面前に迫ってくる。核心部の一つである蟻の門渡りの神経質な細尾根と壁の様な雪壁もつぶさに見えてきた。蟻の門渡りの奥に見える頂上直下の最後の登りの雪は、風に磨かれてテカテカに光っている。
あれに登んのかよ、とつい口に出してしまった。
関沢ICの閉鎖ゲートをスタートしてから、人の姿を見ていない。冬に登った事のない山に一人で登るというのは、非常に心細い気持ちになる。何度も振り返り、人が来ていないか探してしまう。あの山に一人で登り、一人で降りて来られるだろうか。細尾根で足を踏み外し、数百メートル滑落したらどうなるだろうか。急登の途中で進退窮まる状況になってしまわないだろうか。そんなネガティヴな事ばかりを考えては不安になり、また後ろを振り返ってしまう。冬山の一人は、孤独の色が濃い。
蟻の門渡り直下の鞍部に到着した。登るべき目の前に道はなく、雪の壁だけが迫って見える。空に向かって登っていく様な斜度だ。
確かにこれはスノーシューでは登る事は出来ない。そしてここは、雪もある程度締まっていなければ、登るのが難しいだろう。今日の私は運が良い。天気も穏やかで、日差しもあるのに雪も緩まず適度に締まっている。
スノーシューを外し、ストックと一緒にデポする。アイゼンを装着し、ピッケルを握る。私はアイゼンとピッケルのコンビネーションで登るのが好きなのだが、東北の山での出番は少ない。これをやりたくてここに来たのだ。
えいやと気合いを入れ、雪壁に挑む。のっけから両手を雪壁に手をつけて登る事になった。こうして登ってみると垂直に近い感覚だ。雪壁にピッケルのシュピッツェからヘッドまで突き立て、アイゼンを蹴り込み、フロントポインティングで登っていく。この傾斜だとピッケルを突いているもう片方の手は雪壁を握って食い込ませているだけなので、ピッケルがもう一本欲しくなる。一手一手、一歩一歩、確実に落ちないようにする事だけを考えて登っていくしかない。
ここからが蟻の門渡りの名前所以の極細尾根だ。見るからに細く、両側が切れている。狭隘な尾根を歩かねばならない緊張感と、かなりの高度感で、キ○タマが縮み上がる。膝もカクカクと震える。
何時間もかけて来たのだからと、帰りたくなる気持ちを押さえ込んで進んでみる。何故かこんな所にウサギの足跡があって、仲間が居たのかと思うと嬉しくなってしまった。
雪壁を登っては細尾根を歩き、細尾根を歩いては雪壁を登る。思ったよりも山頂直下まで距離があって時間がかかる。否、緊張感によって時間の感覚は麻痺している。しかし、まだ到着しないのかという焦燥感が徐々に出てくるようだった。
そして何よりも、ここから下って帰る事が出来るのか、という不安がずっとあった。
頂上直下だ。蟻の門渡りの急登ほどの傾斜はないものの、なかなかの威圧感だ。ここからも大半が両手をついての登りになりそうだ。
登り始めてみると、蟻の門渡りよりも雪が締まっていてアイゼンの歯を良く噛んでくれ、安定感を感じる。ピッケルを突き立てたり、アイゼンを蹴りこむと、キュッという雪が鳴く様な感覚がする。
腹が減っていて、腹の虫が食べ物を要求して来るが、ここではどうする事も出来ない。
ピッケルをギュッと締まり雪に差し込んで確保し、アイゼンをズグと蹴り込み、リズム良く登っていく。緊張感は維持しつつも、次第に登る楽しさを感じてきた。
上を見上げると、あそこから先に高い場所が無い。あそこが頂上だ。ペースは崩さずに、徐々に体を上へ持ち上げて行き、ついに頂上が見え・・・げぇーーーっ!!頂上が見えた瞬間にデカいツリーホールに半身がズボとはまりそうになる。デケェ。アブネェ。ナンダコレ。頂上直前で酷い落とし穴だ。最後まで気を抜くなという事だろう。
頂上だ。思わず、やった、と声が出てしまった。嬉しい。これまでにない達成感だ。頂上の標識に頬ずりし、ゴロンと仰向けになってしまいたい。
体力もスキルもある人には大した山ではないかも知れない。でも私には大した山だったのだ。何かこう、今までの経験を搾り出してやりきったのだという強い満足感を得る事が出来たのだ。
やった!
余韻に浸りつつ周囲に目をやる。360度のパノラマビューだ。空は青く、遠くに見える山々は純白だ。何百キロも先の街のビルは芥子粒程も小さく無機質で、ここからでは人が住んでいるとは思えない。誰か来ないかと何度も振り返っていたが、誰も来なくて良かった。この山も景色も私だけのものになった。私は一人だった。
この時持っていった物
服装
ベース | ブレスサーモヘビーウェイトウール上下 |
ミドル | モンベル シャミースジャケット |
アウター | モンベル ストリームジャケット、モンベル アルパインパンツ |
手足 | モンベル トレールアクショングローブ(インナー)、ブラックダイヤモンド アーク、スカルパ モンブランGTX、モンベル アルパインスパッツ |
その他 | ニット帽、サングラス、ネックゲイター |
ザック内(グレゴリー アルピニスト35)
服 | ダウンジャケット、ダウンパンツ、フリース、バラクラバ |
食料 | ドーナツ、チョコクッキー、THERMOS 山専ボトル、スポーツドリンク | 冬装備 | グリベル エアテックエヴォリューション48cm、ブラックダイヤモンド セラックプロ、MSR ライトニングアッセント25、ブラックダイヤモンド ディプロイ3、MSR ベータソー | 予備 | モンベル トレールアクショングローブ、ブラックダイヤモンド ソロイスト、靴下 |
地図 | GARMIN eTrex30(GPS)、地図(ジップロック入り)、コンパス |
非常用 | アライテント スーパーライトツェルト2、ファーストエイドキット |
その他 | スタッフバッグ80L、ヘッドライト、スリング60cm・120cm、カラビナ2枚、ナイフ、ロールペーパー、ウェットティッシュ、コンパクトデジカメ、トレッキングポール(スノーバスケット装着) |
防水対策として、80Lのスタッフバッグを使うようにした。ザック内部にこのスタッフバッグを広げ、この中に装備品をパッキングしていく。この巨大スタッフバッグを導入し、ちょっとしたパッキングテクニックを使う事によって、非常に効率良く詰め込む事が出来るようになる。
スコップとスノーソーを装備に加えるようにした。両方とも雪洞構築に使えるし、ピットチェックをするにも必要だ。雪崩の対策装備として、ビーコンとプローブも重要なのだが、基本的に一人で山に入るのであまり意味がないのと値段がクソ高いので、まだ購入に踏み切れないでいる。
最近はテルモスの他にペットボトルに入っているスポーツドリンクを持ち込むようにしている。雪山は基本的に暑い。暑いのに水分補給がしにくい。必然的に喉が乾くのだが、テルモスの湯が熱くて水分補給と呼べるほど短時間では沢山飲めない。冬山の休憩は体が冷えるので、短時間で休憩してすぐ出発せざるを得ないからだ。冷たい飲み物は体内を冷やすので余計にエネルギーを消費してしまうのだが、喉が乾いた状態で行動するよりも精神衛生的にも良いので、割り切って冷たい飲み物を持ち込む事にした。寒い山を歩き回り、火照った体に冷たい飲み物をグビグビ流し込むのは本当に美味い。
久しぶりに山の記事を書く。この雁戸山が会心の山行だったので書いてみる事にした。
今シーズンの冬は、キャンプより山という感じで遊んでいるのだが、正規の知識を持つ人と行動させて貰っていた結果、雪山での行動の仕方や考え方や生活技術など、スキルのステップアップを図る事が出来た様に思う。ただ、その得た知識も、実践が伴わなければ、それを自分のものにする事が出来たとは言えない。今回は再び一人の行動に立ち返り、やや難しい山に向き合ってみたい。
今回挑む山は北蔵王の盟主の雁戸山だ。
雁戸山は、急峻な登りと極細尾根を持つ蟻の門渡りと、頂上直下の突き上げるような登りが特徴的な山で、無積雪期は連続するロープ場がスリリングなのだという。まして積雪期の難易度は無積雪期の比ではなく、その時の雪質によっては、東北の中でもかなり高くなるという前評判だった。ヤマレコでは、冬の雁戸山は選ばれた者だけが頂上に到達できる…という話も出ているようで、私のような初級者には敷居の高さを感じる。
雁戸山は東北の山では珍しい事に、アイゼンとピッケルが必須だ。東北の山はスノーシューで雪を掻き分けながら山頂を目指すのが一般的なのだが、ここはスノーシューでは全く登れない傾斜が連続する為、アイゼンとピッケルが必要なのだ。
私はこの山の無積雪期は登った事がない。無積雪期に登った事がない山に突っ込んでいくのはセオリー外で危険なのだが、登ってみたくなったのだから仕方がない。いっちょやってみっか。
5時半自宅出発、7時現地スタート、11時頂上、13時下山完了で計画を組んだ。頂上まで3時間半程度の時間がかかるという余裕を持った想定と、初めての山である事を加味しても、かなり余裕のあるスケジュールになっている。
無積雪期の登山口である笹谷峠は冬期通行止めで車で入る事が出来ない。山形自動車道の関沢ICで降りて直ぐ脇の冬期通行止めゲート前に駐車エリアがあり、そこが積雪期の最もポピュラーな登り口になっている。ここは休日ともなると、車の停め場所もなくなるほどだという事だ。それもそうで、笹谷峠からは北蔵王雁戸山方面とハマグリ山・山形神室方面の2方向に入ることが出来、閉鎖ゲートからのアクセスがいい事といずれも眺めが良い山である事から人気が高いようなのだ。
その駐車エリアに到着すると、車が一台も停まっていない。私が一番乗りのようだ。平日という事もあって山に入る人が少ないのだろう。
閉鎖ゲートを越えてスタートする。
しっかりしたトレースが残っている。前日の祝日の天候が良かった事もあって人が沢山入っていたのだろう。独力で山に向かうという意味からは外れてしまうが、不案内な私にこのトレースは非常に助かる。しかしその一方で、トレースを追って歩く事のつまらないことつまらないこと。
笹谷峠に繋がるという旧道を歩きながら、八丁平を目指す。旧道を歩いていくと、八丁平にある送電塔が見えてくるので、トレースがない場合は、これを目指して歩くといいだろうか。
八丁平に到着した。目の前が開けている。先ほどまでつまらない林間歩きだったのだから、尚更気分が晴れる。ここまで30分から40分というところだろう。
モルゲンロートは終わってしまったが、日が昇り始めてさほど時間もたっていないので、日差しはまだ朝日という感じだ。
風の弱さ、青空、強い日差し、今日一日の好天が約束されたようなものだ。こんなに穏やかな厳冬期の冬山はなかなか無い。
八丁平からは、雁戸山方面とハマグリ山方面に分岐している。
ここから眺めるハマグリ山の盛り上がりが女性的で美しい。雪が少なくてだいぶ毛深く見えるが、オッパイのようだ。
なだらかな八丁平を超えると広葉樹の樹林帯に入る。ここもトレースがしっかりしているので、これを利用する。冬山はルートファインディングも楽しみの一つだと思うが、それにはラッセルもつきものだ。今シーズンに限ってはラッセルはお腹いっぱいの状態なのもあって、ラッセルしなくて済んだのは助かった。トレースが1本しかないので、昨日のみんなは登りも下りもこれを辿ったのだろうか。下りなんてトレースを使わずにフカフカの雪を踏んで下った方が楽なのに。
高度を徐々に上げるにつれ、背後のハマグリ山と山形・仙台神室が目と同じ高さに見えてくる。山形側に目を向けると、街並みの奥に月山、その左側に朝日連峰、更にその左に飯豊連峰が見える。天気が良いと、景色を楽しむために立ち止まってしまう回数がつい多くなってしまう。
カケスガ峰に到着した。森林限界を超え、奥には蔵王の山々が見えている。本日の目標である雁戸山もピラミダルな山容を見せて屹立している。雪面にはシュカブラが浮かび上がり、盛り上がった部分にはエビの尻尾が形成されている。ここが風が強い場所である事がわかる。
カケスガ峰から風の雰囲気が変わった。風自体は緩いのだが、肌を刺すような冷たさを感じるのだ。標高こそ1300mちょっとだが、日本海側から太平洋側に向かって蔵王らしい風が吹き抜ける。樹林帯では暑くてアンダーの上にシェルジャケットだけを着ていたが、寒さを感じて思わずミドルとネックウォーマーを装備した。
ここから先は、しっかりしたトレースはない。風の流れを読み、雪庇に注意しながら進もう。
カケスガ峰から前山のあたりまで歩いてくると、雁戸山の山体が面前に迫ってくる。核心部の一つである蟻の門渡りの神経質な細尾根と壁の様な雪壁もつぶさに見えてきた。蟻の門渡りの奥に見える頂上直下の最後の登りの雪は、風に磨かれてテカテカに光っている。
あれに登んのかよ、とつい口に出してしまった。
関沢ICの閉鎖ゲートをスタートしてから、人の姿を見ていない。冬に登った事のない山に一人で登るというのは、非常に心細い気持ちになる。何度も振り返り、人が来ていないか探してしまう。あの山に一人で登り、一人で降りて来られるだろうか。細尾根で足を踏み外し、数百メートル滑落したらどうなるだろうか。急登の途中で進退窮まる状況になってしまわないだろうか。そんなネガティヴな事ばかりを考えては不安になり、また後ろを振り返ってしまう。冬山の一人は、孤独の色が濃い。
蟻の門渡り直下の鞍部に到着した。登るべき目の前に道はなく、雪の壁だけが迫って見える。空に向かって登っていく様な斜度だ。
確かにこれはスノーシューでは登る事は出来ない。そしてここは、雪もある程度締まっていなければ、登るのが難しいだろう。今日の私は運が良い。天気も穏やかで、日差しもあるのに雪も緩まず適度に締まっている。
スノーシューを外し、ストックと一緒にデポする。アイゼンを装着し、ピッケルを握る。私はアイゼンとピッケルのコンビネーションで登るのが好きなのだが、東北の山での出番は少ない。これをやりたくてここに来たのだ。
えいやと気合いを入れ、雪壁に挑む。のっけから両手を雪壁に手をつけて登る事になった。こうして登ってみると垂直に近い感覚だ。雪壁にピッケルのシュピッツェからヘッドまで突き立て、アイゼンを蹴り込み、フロントポインティングで登っていく。この傾斜だとピッケルを突いているもう片方の手は雪壁を握って食い込ませているだけなので、ピッケルがもう一本欲しくなる。一手一手、一歩一歩、確実に落ちないようにする事だけを考えて登っていくしかない。
ここからが蟻の門渡りの名前所以の極細尾根だ。見るからに細く、両側が切れている。狭隘な尾根を歩かねばならない緊張感と、かなりの高度感で、キ○タマが縮み上がる。膝もカクカクと震える。
何時間もかけて来たのだからと、帰りたくなる気持ちを押さえ込んで進んでみる。何故かこんな所にウサギの足跡があって、仲間が居たのかと思うと嬉しくなってしまった。
雪壁を登っては細尾根を歩き、細尾根を歩いては雪壁を登る。思ったよりも山頂直下まで距離があって時間がかかる。否、緊張感によって時間の感覚は麻痺している。しかし、まだ到着しないのかという焦燥感が徐々に出てくるようだった。
そして何よりも、ここから下って帰る事が出来るのか、という不安がずっとあった。
頂上直下だ。蟻の門渡りの急登ほどの傾斜はないものの、なかなかの威圧感だ。ここからも大半が両手をついての登りになりそうだ。
登り始めてみると、蟻の門渡りよりも雪が締まっていてアイゼンの歯を良く噛んでくれ、安定感を感じる。ピッケルを突き立てたり、アイゼンを蹴りこむと、キュッという雪が鳴く様な感覚がする。
腹が減っていて、腹の虫が食べ物を要求して来るが、ここではどうする事も出来ない。
ピッケルをギュッと締まり雪に差し込んで確保し、アイゼンをズグと蹴り込み、リズム良く登っていく。緊張感は維持しつつも、次第に登る楽しさを感じてきた。
上を見上げると、あそこから先に高い場所が無い。あそこが頂上だ。ペースは崩さずに、徐々に体を上へ持ち上げて行き、ついに頂上が見え・・・げぇーーーっ!!頂上が見えた瞬間にデカいツリーホールに半身がズボとはまりそうになる。デケェ。アブネェ。ナンダコレ。頂上直前で酷い落とし穴だ。最後まで気を抜くなという事だろう。
頂上だ。思わず、やった、と声が出てしまった。嬉しい。これまでにない達成感だ。頂上の標識に頬ずりし、ゴロンと仰向けになってしまいたい。
体力もスキルもある人には大した山ではないかも知れない。でも私には大した山だったのだ。何かこう、今までの経験を搾り出してやりきったのだという強い満足感を得る事が出来たのだ。
やった!
余韻に浸りつつ周囲に目をやる。360度のパノラマビューだ。空は青く、遠くに見える山々は純白だ。何百キロも先の街のビルは芥子粒程も小さく無機質で、ここからでは人が住んでいるとは思えない。誰か来ないかと何度も振り返っていたが、誰も来なくて良かった。この山も景色も私だけのものになった。私は一人だった。
タグ :山歩き
2016年01月25日
雪中キャンプ 岩手県一関市某キャンプ場
それにしても、今シーズンの冬は雪が降らない。
雪中キャンプをしたくとも肝心の雪がないし、雪山を歩きたくとも冬用のルートはブッシュだらけで使えない。そんな事が続いていた。
冬こそキャンプシーズンであると考えている私はフラストレーションがたまっていたが、ようやくまとまった雪が降ったので、キャンプ仲間と岩手県のキャンプ場に向かってみた。
この時持っていった物
服装
ザック内(グレゴリー バルトロ65)
ザック外の道具(使用したもののみ記載)
冬本番なので、モンベルのエアーマットから、サーマレストのリッジレストに切り替えた。その他、シエラカップを2個から3個に買い足した。防寒もこんなものだろう。
キャンプ前に登山装備で山を歩いたが、この装備一覧は面倒なので、ここでは省略する。
今回は、雪を目いっぱい楽しもうと思っている。降りたてのフカフカな雪の上をスノートレッキングし、その後、仲間とキャンプ場で合流して雪中キャンプをするのだ。
今回のキャンプ場は、岩手県の山奥にあるキャンプ場(野営場)で、夏でも利用料金は無料で、何と薪も無料という、素晴らしいキャンプ場だ。今回は薪を持参したが、山のように積まれている薪にワクワクしないキャンパーは居ないだろう。
ここは山奥なだけあって、積雪量も非常に豊富で、既に120cmに達そうかという状況だ。除雪の済んである道路の脇は場所によっては人の背ほどの高さの壁が出来上がっている。
このキャンプ場の前の道路を500mほど進むと冬季通行止めになっていて、その奥に小さな山があるので、キャンプの前にこれと戯れようと考えている。ここは、手軽に雪上歩きとキャンプが楽しめる良い場所だ。
この週末は西日本を中心に大荒れの天気となる予報で、東北も荒れる対象になっているという。折角の雪中キャンプなので、多少荒れた方が雰囲気が出るのではないかと勝手な期待をしている。
どうも、ここは風が強くなりやすい場所らしい。去年の1月には、仲間のテントが一瞬の突風で根こそぎ飛ばされて行方不明になり、近くの温泉旅館に逃げ込むという事態が発生したという。テントの設営は、工夫しなければならないだろう。
自宅を9時前に出発する。目的地に近づくにつれて、真っ白な雪の景色に一変する。巨大なブナの木に雪が積もっては落ちていく。本格的な冬の景色になってきたじゃないか。
キャンプ場奥の冬季通行止めのゲート前に10時半に到着し、登山装備に切り替える。アンダーウェアはキャンプで使っているものを流用、薄手のフリース、ハードシェル上下。
山行記事は、ブログに書くのと動画編集が面倒な割に読んでくれる人が少ないので書くのは止めてしまったけれど、山歩き自体はやめていた訳ではない。年末年始は北アルプスで年越しをして美しい初日の出を拝み、今週前半に東北で異常な荒天だった時には、岩手のある山を2泊3日で攻撃していた。これでもスキルアップを重ねていたつもりなのだ。
さあ行こう。1時半をリミットと決めて進む。道路脇の雪の壁をエイと乗り越え、スノーシューを履いて一歩踏み出す。
げぇーっ!!めちゃくちゃ雪が沈む!!
酷い場所だと、膝と同じ深さまで沈む。降ったばかりの新雪なので、沈むのは想定通りだけれど、もう少し雪が落ち着いているのではないかと思っていた。これがずっと続くのかと思うとゲンナリするが、体力作りだと思って頑張ってみるか。
その後、3時間の地獄のラッセルと格闘し、タイムリミットの1時半を迎えたので、入り口に引き返す事にした。3時間かけた道のりも、帰りは30~40分程度だったろうか。
冬季閉鎖ゲート前から15秒も車を走らせれば、今日のキャンプ場だ。キャンプ場の前には仲間の車が停まっている。キャンプ場の入り口は完全に雪に埋もれているので、適当に足場を作って入っていっているようだ。
仲間の踏み跡を使ってキャンプ場に入っていくと、既に簡易タープが設営されている。その脇には管理棟と思われる建物があって、薪が山積みになっている。薪が無料というだけある。いいキャンプ場だ。夏に来てみようか。
個人装備と共同装備を運び込み、車は近くの温泉施設の駐車場に置きに行く。温泉施設の職員に、キャンプ場で一晩キャンプしますね、と一言断りをいれるのを忘れない。除雪車の邪魔になるので車道に車をおかないように、という注意だけあった。
テントを設営する。
雪中キャンプでは雪を踏んで均して、その上にテントを張る。今現在は無風ではあるものの、ここは強風地帯なので、雪を掘って暴風目的の囲いを作ってから、そこにテントを張ることにする。
フカフカの雪は掘っても手応えがなく、雪が安定していないので踏んでもなかなか平らにならないし、踏み抜きをしたりする。いいぞ。こういう試行錯誤をしながらやるキャンプが好きなのだ。たっぷり20分もかけてテントを設営し終えた。
私が雪と格闘している横の簡易タープの下で、仲間たちはビールを飲んでいた。
夕食の献立は、焼き鳥、タラ汁、キムチ鍋、エビ汁だ。鍋料理が3種類だが、冬は温かい汁が嬉しい。
特に我々の雪中キャンプは寒空の下、暖房器具を使わずに冬を楽しむというイカレた泥臭いキャンプスタイルなので、食事で体を温めねばならないのだ。
それにしても、山歩きの後だからか、腹が猛烈に減っている。水分補給も足りていなかったのか、ビールがゴクゴク美味い。焼き鳥の焼き加減も上手で、噛むと肉汁がジュワッと口の中に広がり、そこへビールを流し込む。美味いものは、暖かい場所でも寒い場所でも美味いものだ。
めいめいに好きな酒を飲む。日本酒を飲み始めた仲間も居る。
燗をつけるために黒じょかを持ってきたので、使って貰ったら、下から雫がぽたぽたと漏れ出ている。どうやらヒビが入ってしまっているらしい。炭のような高温の熱源へ冷たい状態のまま直接載せると、強い温度差で割れてしまうのかも知れない。残念だが、黒じょかはまた買おう。
仕方が無いので、カップを湯煎して飲んで貰おう。
この卓上で調理に使っている、このナニ、随分と便利なようだ。アルミテーブルの上で使っても焦げたりしないし、安定性もいい。しかし、結構いい値段がするようだ。
いかん。いいなー、って思っちゃいかん。
危惧していた天候もあまり変化せず、風も大した事は無かった。気温もマイナス5度程度ではないかと思う。寒くないとは言わないが、雪中キャンプとしては実に快適な夜だった。
男たちの夜は短い。次々と酒の酔いに敗れた男がテントへ引っ込んでいく。何時だったか記憶はないが、私もテントに入り、フカフカのシュラフに潜り込んだ。静かな冬の夜、自分の体温で次第に暖かくなっていくシュラフ、天国がそこにあった。
翌朝。
テントに積もる雪がスルスルと落ちていく音で目を覚ます。快適哉、まだ眠れそうなので、シュラフを頭から被り直して、二度寝する。
6時頃、人の声もし始めた所で起きる。そっとテントの外を覗いて見ると、早朝に雪が降ったらしかった。20cmくらいだろうか。
仲間のテント。モンベルのステラリッジ2型。スノーフライ使用。
私もスノーフライ使ってみたいなー。いかん。いいなー、って思っちゃいかん。
イスに雪が積もっていて、それを尻に敷いてしまったものだから、尻が濡れてしまった。アウターのパンツ、ダウンパンツ、アンダーウェア、下着、全てが濡れてしまった。防寒の他にも防水も気をつけねばならない。
冬山で平気で遊べるようになったし、冬山における生活技術も実習形式で身に着けてきた自負もあって、キャンプごときと少しナメていた所があった。雪上でどう考えて工夫するかは、山もキャンプも共通点がある。慣れてきた時こそ気を引き締める必要があるだろう。次回の課題としよう。
雪中キャンプをしたくとも肝心の雪がないし、雪山を歩きたくとも冬用のルートはブッシュだらけで使えない。そんな事が続いていた。
冬こそキャンプシーズンであると考えている私はフラストレーションがたまっていたが、ようやくまとまった雪が降ったので、キャンプ仲間と岩手県のキャンプ場に向かってみた。
2016年1月23日 岩手県一関市某キャンプ場
この時持っていった物
服装
服装 | アンダーウェア上下、ダウンジャケット、ダウンパンツ、フリース、パンツ、マウンテンパーカ、ニット帽、グローブ、防寒ブーツ |
ザック内(グレゴリー バルトロ65)
テント | アライテント エアライズ1、グラウンドシート |
マット | サーマレスト リッジレスト ソーライト レギュラー |
シュラフ | モンベル スパイラルダウンハガー #0、エアピロー、イスカ ゴアテックスシュラフカバーウルトラライト ワイド |
クッカー類 | ダグ 焚火缶、エバニュー ハンドル、イワタニプリムス P-153、250OD缶、シエラカップ3個、スポーク |
食料 | 共同装備 |
その他 | ラジオ、ナイフ、ヘッドライト、LEDランタン、双眼鏡 ビクセン アルティマZ 7x50 |
ザック外の道具(使用したもののみ記載)
共同装備 | 酒、食料、コッヘル、簡易タープ1張、タープ1枚、細引き、スノーピーク 焚き火台S、耐火グローブ、火バサミ、炭、薪、イス、黒じょか、ホットサンドメーカー |
冬本番なので、モンベルのエアーマットから、サーマレストのリッジレストに切り替えた。その他、シエラカップを2個から3個に買い足した。防寒もこんなものだろう。
キャンプ前に登山装備で山を歩いたが、この装備一覧は面倒なので、ここでは省略する。
今回は、雪を目いっぱい楽しもうと思っている。降りたてのフカフカな雪の上をスノートレッキングし、その後、仲間とキャンプ場で合流して雪中キャンプをするのだ。
今回のキャンプ場は、岩手県の山奥にあるキャンプ場(野営場)で、夏でも利用料金は無料で、何と薪も無料という、素晴らしいキャンプ場だ。今回は薪を持参したが、山のように積まれている薪にワクワクしないキャンパーは居ないだろう。
ここは山奥なだけあって、積雪量も非常に豊富で、既に120cmに達そうかという状況だ。除雪の済んである道路の脇は場所によっては人の背ほどの高さの壁が出来上がっている。
このキャンプ場の前の道路を500mほど進むと冬季通行止めになっていて、その奥に小さな山があるので、キャンプの前にこれと戯れようと考えている。ここは、手軽に雪上歩きとキャンプが楽しめる良い場所だ。
この週末は西日本を中心に大荒れの天気となる予報で、東北も荒れる対象になっているという。折角の雪中キャンプなので、多少荒れた方が雰囲気が出るのではないかと勝手な期待をしている。
どうも、ここは風が強くなりやすい場所らしい。去年の1月には、仲間のテントが一瞬の突風で根こそぎ飛ばされて行方不明になり、近くの温泉旅館に逃げ込むという事態が発生したという。テントの設営は、工夫しなければならないだろう。
自宅を9時前に出発する。目的地に近づくにつれて、真っ白な雪の景色に一変する。巨大なブナの木に雪が積もっては落ちていく。本格的な冬の景色になってきたじゃないか。
キャンプ場奥の冬季通行止めのゲート前に10時半に到着し、登山装備に切り替える。アンダーウェアはキャンプで使っているものを流用、薄手のフリース、ハードシェル上下。
山行記事は、ブログに書くのと動画編集が面倒な割に読んでくれる人が少ないので書くのは止めてしまったけれど、山歩き自体はやめていた訳ではない。年末年始は北アルプスで年越しをして美しい初日の出を拝み、今週前半に東北で異常な荒天だった時には、岩手のある山を2泊3日で攻撃していた。これでもスキルアップを重ねていたつもりなのだ。
さあ行こう。1時半をリミットと決めて進む。道路脇の雪の壁をエイと乗り越え、スノーシューを履いて一歩踏み出す。
げぇーっ!!めちゃくちゃ雪が沈む!!
酷い場所だと、膝と同じ深さまで沈む。降ったばかりの新雪なので、沈むのは想定通りだけれど、もう少し雪が落ち着いているのではないかと思っていた。これがずっと続くのかと思うとゲンナリするが、体力作りだと思って頑張ってみるか。
その後、3時間の地獄のラッセルと格闘し、タイムリミットの1時半を迎えたので、入り口に引き返す事にした。3時間かけた道のりも、帰りは30~40分程度だったろうか。
冬季閉鎖ゲート前から15秒も車を走らせれば、今日のキャンプ場だ。キャンプ場の前には仲間の車が停まっている。キャンプ場の入り口は完全に雪に埋もれているので、適当に足場を作って入っていっているようだ。
仲間の踏み跡を使ってキャンプ場に入っていくと、既に簡易タープが設営されている。その脇には管理棟と思われる建物があって、薪が山積みになっている。薪が無料というだけある。いいキャンプ場だ。夏に来てみようか。
個人装備と共同装備を運び込み、車は近くの温泉施設の駐車場に置きに行く。温泉施設の職員に、キャンプ場で一晩キャンプしますね、と一言断りをいれるのを忘れない。除雪車の邪魔になるので車道に車をおかないように、という注意だけあった。
テントを設営する。
雪中キャンプでは雪を踏んで均して、その上にテントを張る。今現在は無風ではあるものの、ここは強風地帯なので、雪を掘って暴風目的の囲いを作ってから、そこにテントを張ることにする。
フカフカの雪は掘っても手応えがなく、雪が安定していないので踏んでもなかなか平らにならないし、踏み抜きをしたりする。いいぞ。こういう試行錯誤をしながらやるキャンプが好きなのだ。たっぷり20分もかけてテントを設営し終えた。
私が雪と格闘している横の簡易タープの下で、仲間たちはビールを飲んでいた。
夕食の献立は、焼き鳥、タラ汁、キムチ鍋、エビ汁だ。鍋料理が3種類だが、冬は温かい汁が嬉しい。
特に我々の雪中キャンプは寒空の下、暖房器具を使わずに冬を楽しむというイカレた泥臭いキャンプスタイルなので、食事で体を温めねばならないのだ。
それにしても、山歩きの後だからか、腹が猛烈に減っている。水分補給も足りていなかったのか、ビールがゴクゴク美味い。焼き鳥の焼き加減も上手で、噛むと肉汁がジュワッと口の中に広がり、そこへビールを流し込む。美味いものは、暖かい場所でも寒い場所でも美味いものだ。
めいめいに好きな酒を飲む。日本酒を飲み始めた仲間も居る。
燗をつけるために黒じょかを持ってきたので、使って貰ったら、下から雫がぽたぽたと漏れ出ている。どうやらヒビが入ってしまっているらしい。炭のような高温の熱源へ冷たい状態のまま直接載せると、強い温度差で割れてしまうのかも知れない。残念だが、黒じょかはまた買おう。
仕方が無いので、カップを湯煎して飲んで貰おう。
この卓上で調理に使っている、このナニ、随分と便利なようだ。アルミテーブルの上で使っても焦げたりしないし、安定性もいい。しかし、結構いい値段がするようだ。
いかん。いいなー、って思っちゃいかん。
危惧していた天候もあまり変化せず、風も大した事は無かった。気温もマイナス5度程度ではないかと思う。寒くないとは言わないが、雪中キャンプとしては実に快適な夜だった。
男たちの夜は短い。次々と酒の酔いに敗れた男がテントへ引っ込んでいく。何時だったか記憶はないが、私もテントに入り、フカフカのシュラフに潜り込んだ。静かな冬の夜、自分の体温で次第に暖かくなっていくシュラフ、天国がそこにあった。
翌朝。
テントに積もる雪がスルスルと落ちていく音で目を覚ます。快適哉、まだ眠れそうなので、シュラフを頭から被り直して、二度寝する。
6時頃、人の声もし始めた所で起きる。そっとテントの外を覗いて見ると、早朝に雪が降ったらしかった。20cmくらいだろうか。
仲間のテント。モンベルのステラリッジ2型。スノーフライ使用。
私もスノーフライ使ってみたいなー。いかん。いいなー、って思っちゃいかん。
イスに雪が積もっていて、それを尻に敷いてしまったものだから、尻が濡れてしまった。アウターのパンツ、ダウンパンツ、アンダーウェア、下着、全てが濡れてしまった。防寒の他にも防水も気をつけねばならない。
冬山で平気で遊べるようになったし、冬山における生活技術も実習形式で身に着けてきた自負もあって、キャンプごときと少しナメていた所があった。雪上でどう考えて工夫するかは、山もキャンプも共通点がある。慣れてきた時こそ気を引き締める必要があるだろう。次回の課題としよう。
タグ :キャンプ
2015年12月25日
ダウン製品の穴を修理
ダウン製品に空いてしまった穴を修理してみよう。
ダウン製品は、冬キャンプの必需品だ。身に着けていれば、極寒の環境でも外の冷気を中へ伝えず、内の暖気も外に逃がさない。ダウンは最強の防寒装備だと断言して間違いない。
そんなダウンジャケットやダウンパンツを、キャンプでアウターとして使っている人は居ないだろうか。それは即刻止めた方が良い。焚き火は服に穴を開けてしまうという宿命を持っているが、ダウン製品の表面の生地はナイロン系である事が多いので、 なおさら穴が開きやすく、どう考えてもその結果は見えている。
私は、先日のキャンプでそのダウン製品に穴を開けてしまった。冬キャンプの防寒具の注意点として、ダウンは穴が開くのでインナーとして使うように、と書いていたのに、穴を開けてしまったのだ。ダウンをアウターで着る様な馬鹿はやらなかったのに、アウターの生地に穴が開き、更にその下のダウンパンツに穴が開いてしまっていたようだ。
ダウン製品というのは非常に値が張るので、穴が開いてしまうと、精神的ダメージが非常に大きい。私が使っていたは、ナンガのポータブルダウンパンツという製品で、とても気に入って使っていたという事もあり、二重でショックだった。
買い替えかと落胆したが、こうした穴が開くのは、実は一般的に起こりうる事なのではないかと考え直した。ネットで「ダウン 穴」で検索すると、思った通り出てくる出てくる。私の様な焚き火で穴を開けたというのはあまり無かったものの、みんな引っ掛けたり突っついたりして穴を開けているようだった。
こうした事例が多いという事は、修理・修繕も簡単に出来る筈だ。調べてみると、ダウン製品は生地がナイロンでる事が多いので、補修の生地を熱で圧着するような事は出来ないので、粘着式の補修生地で穴を塞ぐという対応になるようだった。
amazonでその生地を見つけた。CAPTAIN88の「ナイロン補修シート」という商品だ。いいぞ、これだ。300円以下で買えるのが嬉しい。
手元に届いた。早速ダウンパンツを修理しよう。
改めて穴を見る。結構大きい穴だ。
どれどれ。パッケージには、「ワンタッチ粘着」「強力粘着」「ナイロンウェア、ダウンジャケット、子供用レインコート、傘、ナップサック、テントなどの破れ、カギザキ等の補修に最適です」と書いてある。帽子をヘンテコにかぶった可愛いような可愛くないような女の子も「アップリケ風にカットすれば、かわいく仕上がるよ」と言っている。
なるほど、全体的に漂う昭和的な雰囲気、これはいい製品の証だ。こうして昔から使われている商品というのは、その品質が高く、愛されてきたが故に残ってきたという事が読み取れる。更に、私はこういう若干のイモさが漂う製品が大好きなのだ。
袋から取り出してみる。
紺色だ。色を良く見ないで買ってしまった。ダウンパンツの色は黒だった。修理箇所が目立ってしまうが、このダウンパンツはインナーとしてしか着ない予定だから、これでも良いだろう。直りさえすればいい。
生地をはさみで切る。穴より結構大き目の方が安心だろう。
背面のシールを剥がすと、ベタベタの粘着面が現れる。これを穴に被せる様にピタッと張れば、これで完了だ。
色が気になるが、それ以外は成功といって良いだろう。こんな簡単な作業で直せてしまった。こんなものは、誰も失敗しない。
補修生地は、粘着面の粘着力が強いのと、生地自体も結構しっかりしているので、そう簡単に剥がれる事はないし破けたりする事も無さそうだ。
こんなに簡単に修理出来てしまうとは思わなかった。
補修生地は安い上に用途も広い。テントの修理にも使えるので、意外とキャンプのマストアイテムなのではないだろうか。
ダウン製品は、穴が開かないのが一番良い事だが、もし穴が開いてしまったら、これを使ってみて頂きたい。色も豊富にあるので、オススメだ。
ダウン製品は、冬キャンプの必需品だ。身に着けていれば、極寒の環境でも外の冷気を中へ伝えず、内の暖気も外に逃がさない。ダウンは最強の防寒装備だと断言して間違いない。
そんなダウンジャケットやダウンパンツを、キャンプでアウターとして使っている人は居ないだろうか。それは即刻止めた方が良い。焚き火は服に穴を開けてしまうという宿命を持っているが、ダウン製品の表面の生地はナイロン系である事が多いので、 なおさら穴が開きやすく、どう考えてもその結果は見えている。
私は、先日のキャンプでそのダウン製品に穴を開けてしまった。冬キャンプの防寒具の注意点として、ダウンは穴が開くのでインナーとして使うように、と書いていたのに、穴を開けてしまったのだ。ダウンをアウターで着る様な馬鹿はやらなかったのに、アウターの生地に穴が開き、更にその下のダウンパンツに穴が開いてしまっていたようだ。
ダウン製品というのは非常に値が張るので、穴が開いてしまうと、精神的ダメージが非常に大きい。私が使っていたは、ナンガのポータブルダウンパンツという製品で、とても気に入って使っていたという事もあり、二重でショックだった。
買い替えかと落胆したが、こうした穴が開くのは、実は一般的に起こりうる事なのではないかと考え直した。ネットで「ダウン 穴」で検索すると、思った通り出てくる出てくる。私の様な焚き火で穴を開けたというのはあまり無かったものの、みんな引っ掛けたり突っついたりして穴を開けているようだった。
こうした事例が多いという事は、修理・修繕も簡単に出来る筈だ。調べてみると、ダウン製品は生地がナイロンでる事が多いので、補修の生地を熱で圧着するような事は出来ないので、粘着式の補修生地で穴を塞ぐという対応になるようだった。
amazonでその生地を見つけた。CAPTAIN88の「ナイロン補修シート」という商品だ。いいぞ、これだ。300円以下で買えるのが嬉しい。
手元に届いた。早速ダウンパンツを修理しよう。
改めて穴を見る。結構大きい穴だ。
どれどれ。パッケージには、「ワンタッチ粘着」「強力粘着」「ナイロンウェア、ダウンジャケット、子供用レインコート、傘、ナップサック、テントなどの破れ、カギザキ等の補修に最適です」と書いてある。帽子をヘンテコにかぶった可愛いような可愛くないような女の子も「アップリケ風にカットすれば、かわいく仕上がるよ」と言っている。
なるほど、全体的に漂う昭和的な雰囲気、これはいい製品の証だ。こうして昔から使われている商品というのは、その品質が高く、愛されてきたが故に残ってきたという事が読み取れる。更に、私はこういう若干のイモさが漂う製品が大好きなのだ。
袋から取り出してみる。
紺色だ。色を良く見ないで買ってしまった。ダウンパンツの色は黒だった。修理箇所が目立ってしまうが、このダウンパンツはインナーとしてしか着ない予定だから、これでも良いだろう。直りさえすればいい。
生地をはさみで切る。穴より結構大き目の方が安心だろう。
背面のシールを剥がすと、ベタベタの粘着面が現れる。これを穴に被せる様にピタッと張れば、これで完了だ。
色が気になるが、それ以外は成功といって良いだろう。こんな簡単な作業で直せてしまった。こんなものは、誰も失敗しない。
補修生地は、粘着面の粘着力が強いのと、生地自体も結構しっかりしているので、そう簡単に剥がれる事はないし破けたりする事も無さそうだ。
こんなに簡単に修理出来てしまうとは思わなかった。
補修生地は安い上に用途も広い。テントの修理にも使えるので、意外とキャンプのマストアイテムなのではないだろうか。
ダウン製品は、穴が開かないのが一番良い事だが、もし穴が開いてしまったら、これを使ってみて頂きたい。色も豊富にあるので、オススメだ。
タグ :雑記